悪魔のゲームーーー②
「よし、お仕置も終わりましたんで、次行きましょうか」
「のじゃ……儂、まだ生きてるのじゃ……頭、潰れてないのじゃ……」
たっぷりとアイアンクローをかましたため、どこかホクホク顔の祐樹と、涙目の樹莉。美波以外の全員が恐怖を祐樹に抱いた。
「……こほん……では、気を取り直して次に行きましょうか」
その際、「次は若菜先輩だな……どうやってアイアンクローを決めさせるかだな……」という悪魔の呟きが聞こえて冷や汗をダラダラと垂らす。
『王様だーれだ』
「む、私か?」
二番手の王になったのは、撫子女学院のハリエットだ。それを見て明らかに胸をなで下ろした祐樹と美波以外の六人。
「むぅ……しかし、いざとなればなかなか困るものだな………そうだな。七番は私を癒してくれないか?」
癒す?と全員の心の声がハモった。
先も説明したとおり、撫子女学院は何らかの怪我やトラウマでヒロインとしての力を十全に振るえなくなった者達の集まりで、そのほとんどが戦闘は出来ない。
唯一の救いは、全くもってアビスが現れないということだが、現れた際は絶対にアビスと戦える数少ないヒロインが戦闘に出向く。
そんな環境でハリエットは戦っていたため、知らず知らずの内に癒しを求めるようになっていたのだ。
しかし、これまた難しそうな命令だなと思いつつ、全員が番号の書かれた割り箸に目をーーーーー
「あ」
声を出した人物に全員の目が集まった。黒髪黒目のイレギュラーーーーーそう、祐樹である。
「むぅ、祐樹か。よろしく頼む」
「お、おう」
ハリエットは立ち上がり、祐樹の隣へペタンと座ったが、如何せん何をすればいいのか分からない。
ーーー癒す?癒すってなんだ?とりあえず肩たたきでもすればいいのか?
と、見当違いのことを色々と考えていると、ハリエットはクスリと笑うと、ゆっくりと祐樹に抱きつき始めた。
「……………おう?」
「ハグには、ストレスを軽減させるという効果があることが、数年前の研究で証明されているーーーだから、私を優しく抱きしめてくれ」
「……それくらいなら……まぁ」
と、恐る恐るハリエットの華奢の体に手を回し、ゆっくりと抱きしめる。
「んっ……」
「あ、ごめん……強かったか?」
「いや……思ったよりも力強いのだなと思ってな……もう少し、強くしてくれないか」
「……まぁ、王様の命令は絶対だからな………仰せのままに」
つい、昔のくせか。神楽がよく祐樹に頭を撫でてくれた時のように、無意識の内に祐樹もハリエットの綺麗な金髪を撫で始める。それに、一瞬ハリエットがピクリと反応したが、次第に目を閉じて気持ちよさそうにしていた。
その反応を見ていた八人は、全員大小はあるが、顔を赤くして黙って見ていた。
「………んっ、もう充分だ。ありがとう祐樹」
「大丈夫だ。これで癒しになったのかは知らんが」
五分間。抱きしめあったままの状態が続き、ハリエットは祐樹に笑顔を向けた。
「………また、頼んでもいいだろうか」
「…………………………まぁ、会った時にな」
「甘いよ君達!いいから早く離れて!当分過多で糖尿病なりそう!!」
と、ここでようやく顔を赤くしたままの若菜が待ったを掛けた。
「……大丈夫か?若菜、そう顔を赤くして」
「君たちのせいだからね!それとご馳走様でした!」
「「……………?」」
一体なぜご馳走様を言われたのか分からない祐樹とハリエット。頭に疑問を残したまま次のラウンドが始まった。
『王様だーれだ』
「むっ!儂じゃあ!!」
バーン!と樹莉が割り箸を掲げた瞬間、祐樹が一気に距離を取った。
「祐樹殿!?その反応はなんじゃ!?」
「いや、隣だと番号見られそうだったから」
「そ、そんなことしないのじゃ!」
嘘である。この女。悩んでいるフリして祐樹の番号を見ようと画作していたのだ。
作戦が無発で終わった樹莉。しょうがないので真面目に命令を考え始めた。
「………むぅ、確かにこれは中々すぐには出てこんのう……」
と、普通に悩む樹莉。一分後にようやくーーー
「ふむ、それならば、最初に姉様がいった命令にするかのう。四番が儂の頭を撫でるのじゃ」
「………お、私か」
と、声を上げたのはアメリアだった。
「……むぅ、ワンチャン祐樹殿を狙っていたが……しかたないのう」
「悪いな、祐樹じゃなくて……ほら、樹莉。おいで」
「遠慮なくなのじゃー!」
ポンポン、とアメリアの姿勢が正座に変わり、膝を叩き始めたので、樹莉は遠慮なくそこに膝を乗っけてアメリアに甘え始めた。
「……樹莉ちゃんねぇ。昔から甘えるのが好きで、よく姉様!姉様!言って膝枕となでなでをねだってきたのよ………私たち、早いうちに両親無くしちゃってたから……」
「………そっか」
と、隣に来た若菜がボソボソと祐樹に耳打ちをした。
「ほら、どういう撫で方がいい?」
「髪を梳くような感じがいいのじゃ……」




