メンバー集めーーー③
「……はぁ、祐樹くんのギルド……」
一方その頃、メンバー集めに勤しんでいた菜々達は、椎菜の部屋にやってきていた。
「そうなんです!椎菜さんもどうですか?」
「え……えっとぉ……」
ーーーこれ、本当に祐樹くんのギルドなんでさかね?
当然、椎菜もギルドに作らず、入らず、ギルド入会の話を)持ち込ませずの非ギルド三原則(椎菜が勝手につけた)を知っているため、当然怪しみ、ゆっくりと梨々花を見た。
サッ!
ーーーなるほど……確信犯ですかこれ。
咄嗟に顔を背けた梨々花に、心で苦笑いを返した椎菜。
「……分かりました。その申し出、ありがたく受け入れます」
「ほ、ほんと!」
「えぇ」
ーーーそれに、もし祐樹くんのギルドではなくても、菜々さんのなら楽しめそうですし。
「あ、ありがとう!椎菜さん!」
「よしよし、菜々さんは甘えんぼさんですね」
嬉しさが極まったのか、菜々は椎菜に勢いよく抱きつき、最大限の感謝を示した。
「これで七人目ですわね!この調子で残り五人もーーー」
「あ、アンナさん。少し待ちませんか?」
と、次に行こうとするアンナを椎菜は止めた。
「もう先にギルド、作っちゃいませんか?」
「ーーーと、言うことでお師匠様!ギルドメンバー集めてきましーーーーー」
「……あ、うん……お疲れ様……」
「お師匠様!?」
メンバー集めから帰ってきた菜々達を待っていたのは、やけに疲れた様子で、大人しく神楽の膝を借りて横になっている祐樹の姿だった。
「ど、どうしたんですか!?そんな疲れた様子で!」
「どうしたもこうしたも、朝凪さん、君たちのせいなんだけど……」
祐樹がギルドを結成するという菜々の勘違いから始まったこの騒動。その噂はあっと驚く間に瑠璃学園へ広まり、たくさんの生徒が祐樹の元に押しかけ、今やっと誤解が解けた所だった。
「ご、誤解だったんですかぁ!?」
「俺、言ったよね……菜々さんはギルドを作るべきだって……どうしたら俺のギルドって聞き間違えるの……」
「ご、ごめんなさい!お師匠様!わ、私お師匠様と同じギルドになれるんだって思ったら……その、嬉しくて……」
「……………」
菜々のうるうるとした瞳に、思わず「あ、やっぱ俺のギルドでもいっかなー」とか一瞬思ってしまったが、それは鋼の意思で頭の中から弾き出した。
「いいのかな?祐樹、弟子ちゃんがこんなに懇願してるのに、お師匠として無視しても」
「……あ、あなたは入学式の時の……」
「はーい、七瀬神楽よ。瑠璃学園唯一の祐樹のお姉ちゃん役よ、よろしくね、菜々ちゃん」
「……お姉ちゃん役?」
「神楽様は練馬区崩壊事件の際、祐樹くんを初めて見つけ、その後中等部に入るまでずっと面倒を見ていたそうです」
「正解正解!君、よく知ってるね」
「私、情報収集が趣味なので!」
と、神楽がぱちぱちと加奈恵に拍手を送った。
「ねぇ菜々ちゃん。私も、あなたのギルドに入っていいかな?」
「え?いいんですか!?」
「勿論。祐樹にも、私が入ったら安心できるって言われたからね」
と、膝で横になっている祐樹の頭を撫でながら笑顔で言った神楽。
「あ、ありがとうございます!」
「す、すごい…この部隊、ソロでもたくさんの実績を上げたばかりの実力者揃いのギルドですよこれ………」
アンナ、椎菜、梨々花、菜々、加奈恵、アデル、神楽………ついでに祐樹と、図らずしも優秀なヒロインばかりが集まったギルドとなってしまった。
「お、お師匠様……本当に、お師匠様はギルドに……」
「………だ、ダメだ。そんな泣きそうな顔しても、俺は絶対に揺るがなーーーー」
「………………………」
「…………ちょっと学園長に聞いてみるから………あんまり期待するなよ」
「………!は、はい!」
「祐樹様!?菜々さんに甘すぎませんか!?」
弟子に甘々な祐だった。
「だけど、リーダーは朝凪さんだから。ギルドリーダーは、共鳴系のギフトを持っている方がいいから」
「へぇ、菜々ちゃんのギフトは共鳴系なんだ」
「はい!……その、カリスマっていうですけど、私もよく分からないギフトなんですけど……」
「へぇ、カリスマ。まぁあれは数あるギフトの中で一番謎だから、菜々ちゃんが分からなくても仕方ないよ」
と、よしよしと祐樹と視線を合わせていた菜々の頭を撫で始める神楽。
こうして、菜々の勘違いから始まったギルドのメンバー集めは、一時的な終息を見せた。




