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戦闘開始ーーー②

 各地、ヒロインが配置につき、そこかしこから戦闘音が聞こえてくる。Bクラスアビスから、たまにB+並のアビスが混じっているが、ジャガーノート+アビスの能力で作った機械の腕で次々と屠っていく。


「っ!」


 飛翔型のアビスを斬った瞬間、三方向から同時に裕樹を狙ったアビスの腕がやってくるが、一本目は回転しながら受け流し、その勢いで、反対側の腕を飛ばし、慣性の法則に従い、その衝撃で後ろに下がり、三本目を回避。


 ーーーっ、うぜぇ!


 対して苦ではないが、第一線と第二線のヒロインがケガしないように、首筋にも意識向けなくては行けないので、単純に面倒臭い。


 形状を変化させ、両刃型に変化させ、次々と襲ってくるアビスたちを切り伏せたり、受け流したりしながら一体ずつ着実に減らしていく。


「………恐ろしいですね、裕樹様は」


 第二線、北西方面を守っているエレナ率いる『プリティヴマータ』は、第一線のおかげで、全然アビスが寄ってこないーーーはっきり言って暇である。


 意気込んで飛び込んだのはいいが、殆ど第一線にアビスは集中しており、こちらに来るのなんて一、二体程度である。


「エレナさん、どうしますか?」


 エレナに聞いてきたのは、プリティヴマータの副リーダーである、二年生の浅場巴(あさばともえ)。そのどうしますには、裕樹を助けに行くかというのが含まれている。


 行きましょうーーーという前に、第二線にいるヒロイン全体に向けて裕樹からの警告が入った。


『そろそろ境界(ゲート)が、そちらまで開きます。準備を』


「……どういう原理なんでしょうか、裕樹様の察知能力は」


 エレナは、ジャガーノートに手を伸ばし、右手の小指にある指輪をコア部分に触れさせ、レッドグレイヴ社特製ジャガーノートである『フォルカス』を起動させた。


「皆様、聞いていましたね?お仕事の時間ですーーーー」


 ぐらり、と空間が歪み、底からアビスの腕が飛び出した。


「一体たりとも、ここは通させません」







 戦闘が始まって三十分が経過した。あれから、境界(ゲート)の出現位置は第三線にまで広がったが、そこはしっかりと『ローゼンメイデン』が指揮をとり、被害ゼロに抑えた。


 第一線、第二線の方も被害はほとんどないと言っても過言ではなかった。魔力やジャガーノートの損傷はあるものの、人的被害はゼロ。


 チリリッ


 ーーーっ、この感じ!


「大型アビス出現予定を確認!総員、集合予定地まで待避!」


 アビス大侵攻の親玉は、自身の傾向が不利だと感じると、偵察代わりに放っていたアビスを全部自身の身に取り込むため、一時的に境界(ゲート)が出てこない。勿論、それもしっかりとデータにあったため、裕樹の指示を聞いた各員は集合知まで退避した。


「裕樹くん、こっちへ」


「空羽先輩」


 アビスも出てこないということで、各自で第四線が待機していたベースキャンプ地まで待避をし、強襲科生徒会長の空羽に呼ばれた裕樹。


 テントが建てられており、そこにはテーブルと、端末に向かい合って難しい顔をしている美結の姿が。


 裕樹が来たことに気づくと、わかりやすくほっとしたような顔つきになった。


「良かった、裕樹くんが来てくれて」


「美結先輩、どうかしましたか?」


「私は、このアビス大侵攻が始まってからずっとここでアビス反応を見ていたですが……」


 端末を覗くように手招きをされたので、見ると、そこには芦ノ湖全体を埋め尽くすかのような強力なアビス反応があった。


「突如としてこの巨大反応が現れまして……裕樹くん、これは本当にホエール型なんですか?」


 美結の質問に、裕樹は首筋に手を当てる。


「……えぇ、確かにあれはホエール型で間違いは無いですが……《《明らかに大きすぎますね》》」


 本来ならば、ホエール型の体長は50メートル程なのだが、この芦ノ湖を埋めつくような反応は、どう少なく見積もっても、100mは超えているだろう。


「……これは、新たにホエール型以上の位を作らなければダメですね」


「ですね。とりあえず、仮称としてガイア型とでも呼びましょうか」


 適当に裕樹が名前を付け、生徒会長三人が頷いた。


「あ、お師匠さーーーー」


「しぃーですわ!菜々さん!今裕樹様は大事なお話中ですわ」


 その時、裕樹のことを見つけた菜々が、裕樹の名前を大声で呼ぼうとしたが、流石に空気を読んだアンナがとめた。


「……すいません、行ってきますね」


「……えぇ、貴方の可愛いガーディアンですもんね」


 ペコり、と頭を下げると、裕樹は菜々の元に駆け寄った。


「お、お師匠様!ご無事で何よりです!」


「うん。朝凪さんも、アンナも無事でよかった………梨々花と椎菜は?」


「お二人とは別々にここに辿り着いたので。あのお方たちを探している途中で、裕樹様を見つけたのですわ」


「そうか。なら、急いで二人をーーーーーー」


 その時、裕樹の首が痛いぐらいに反応をし始めた。


「グッ!?」


「お師匠様!?」


「裕樹様!?」


 あまりの痛さに首を抑えてしまい、その場に踞る。


 ーーーなんだ?この痛さ、今まで感じたことはーーーーーー



 影がさした。芦ノ湖から出てきた、イカのような巨大なアビスが姿を表した。


「……っ、なに、これ……!」


「頭が……痛く………」


 アビスの放つ魔力にやられたのか、アンナと菜々が頭を抑え始めた。

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