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準備期間ーーー②

 久々に、あんな視線を受けたせいか、随分と懐かしい夢を見た。まぁそれも、たった数分で消えたのだが。


 ーーー夢か。


 祐樹は、今見ている光景がすぐに夢だとわかった。祐樹の目の前には、相変わらずに喋ってくるアンナと梨々花。しかし、その後ろからは、祐樹を睨みつけているクラスメイトの姿。


 分かっている。彼女たちがもうあんな目で見ないことは分かりきっている。だから祐樹はこれを夢だと思っているのだ。


 シーンが変わり、次に瞬きした時はカタリナ含むクラスメイト全員が俺に頭を下げて謝罪をしている光景だった。


『………なに、この光景』


 その時の祐樹は、頭がこんがらがってしまい、発した第一声がこんなセリフだったこともしっかりと覚えている。


「……あら、起きましたか?」


「ーーしい、な?」


 夢から覚めた祐樹は、今の自身の状況に違和感を感じた。何やら頭はくすぐったいし、祐樹が見上げるような形でアンナの顔が視界に入るし、何より後頭部が柔らかい。


 そこで祐樹は、やっと椎菜に膝枕をされていることに気づいた。膝枕など、三年前に神楽にされた以降で、随分と懐かしい記憶を刺激された。


「……あー、なんかすまんな」


「いえ、私がやりたくてやっているので」


 と、見蕩れるほどに柔らかい笑みを浮かべる椎菜。なんとなく、その顔が見ずらくて、顔を背けた。


「……どれくらい寝てた?」


「三時間くらいでしたね……もう、無理しすぎです」


「いてっ」


 ペちっ、と叱るように祐樹の頭を叩いた椎菜。まぁ絶対に痛くは無いのだが、痛いというのはお約束だろう。


「……三時間もこの体勢でいたのか……悪いな」


「いえ、先程も言ったように、私がこうしたかっただけですから。一回やって見たかったんですよね」


 と、嬉しそうに祐樹の頭を撫で続ける椎菜。流石に祐樹も気恥ずかしくなったので、ゆっくりと椎菜の手を掴んでから上半身を起こした。


「……なんかすっごい腹減ったな」


「お昼ご飯も食べないで寝たので仕方ないです。食堂、行きましょうか」


「そうだな」


 祐樹は一度、ジャガーノート整備用の端末へ向かい、長い間操作されなかったのでスリープモードになっていた端末の電源を切って、整備の終わったジャガーノートを持ち上げた。


「それじゃ、これを一度整備局の方に預けてから行こう」


「分かりました」


 同時刻。祐樹に優先的にジャガーノートの整備と、ついでに菜々の能力検査も終えた梨々花達は、アデルを誘って戦闘訓練に勤しんでいた。


「それでは、菜々さんのギフトも分かったことですし、ギフトを発動する練習を行いましょうか。ここには、丁度種類別のギフト持ちが全員いることですし」


「分かりました!」


 ようやく、菜々のギフト鑑定も終わり、いよいよ、より実践的なギフトを混じえた戦闘訓練を始めるところだ。


「まず、ギフトの復習からしておきましょうーーー『脆弱を測る目』!」


 アンナがそう叫ぶと、アンナの右目が青く輝き始める。


「私のギフトは、目で見る知覚系の『脆弱を測る目』ですわ。どんなアビスだろうと、瞬時に弱点を見極め、迅速な殲滅が可能となります」


「へぇ……流石アンナさん!」


「それほどでもーーーあるんでしてよ!」


 と、菜々に褒められ天狗になっているアンナ。一通り満足しきると、コホンと咳払いをひとつ挟んだ。


「知覚系は、他にも遠くのものが見えるようになったり、未来を見るのもあるので、覚えておいて損は無いですわ」


「はい!」


「じゃあ、つぎは私」


 アデルは、自身のジャガーノート『ティルヴィング』を構えた。


「……そういえば、アデル様のジャガーノート、お師匠様のと似てますよね……」


「うん。性質は違うけど、形は同じ」


 アデルのジャガーノートは、祐樹のダインスレイブの色違い版であり、祐樹の真っ黒と違い、真っ白である。自由に性質を変えるという化け物じみた機構は流石にない。もちろん、ケラウノス社製である。


「見てて、菜々ーーーんっ」


「っ!?」


 次の瞬間、アデルの体は一瞬にして消え、部屋の端っこにいて、またすぐに戻ってきた。


「私のは、強化系の『縮地』。さっきのようにすごい早い」


「す、凄いですね………」


 あまりの速さに壮絶した菜々。


「私のは疲れるからやらないけど、放出系の『バースト』。簡単に言うと、物凄い一撃が撃てるんだ!」


「それだけじゃないですわよ、梨々花さん」


 梨々花の説明不足な説明にアンナがすかさず割り込む。


「放出系には、味方のギフト能力を高めるギフトもあります。覚えておいてください」


「はい!」


 相変わらずいい返事をする菜々に皆の顔が緩む。アデルは相変わらずの無表情だが、口角が少し上がっていた。


「……あれ?でも、まだ三つですよ?まだあと一つの共鳴系がないですけど……」


「……?何を言ってるんですか?菜々さん、共鳴系はあなたですわよ?」


「え?私?」


 共鳴系は、ほかの三つのギフトよりも、圧倒的に所持しているヒロインが少ない。


「菜々さん、あなたのギフトは今も謎の多い共鳴系の中でも、一番謎とされているギフト、『カリスマ』ですわ」


「………カリスマ?」

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