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作戦会議ーーー③

「第一線、第二線の後ろは、ギルドランクAの部隊と、個人で実績を上げている計100人を設置する。指揮は『ローゼンメイデン』が取ってくれ」


「っ、は、はい!」


「第四線、第五線は残りのヒロインたちで抜け出したアビスの対処だ。そして、ここが最終防衛ラインだ」


 箱根を中心に、直径10キロほどの赤い円が描かれる。ここが、今回の戦闘ポイントであり

 抜け出されたら終わりのデッドラインでもある。


「これから毎日、この時間帯に会議を行うことにする。授業は中止だ。各々、自身のコントロールと、ジャガーノートの調整を怠らないようにーーーーそれでは、第一回目は解散とする」


 その言葉で、部屋にあかりがつき、各々リーダーはギルドメンバーに内容を伝えに行くのだが………。


「…………」


 祐樹の視線の先には、こいこいと手招きをしている美冴の姿。ため息を吐くと、祐樹は黙って立ち上がった。


「……じゃあ、言ってくる」


「はい。待ってますね」


「いや、別に待たなくてもいいんだが……」


 祐樹の目を見つめて、ニコニコと笑顔な沙綾。


「いえ、実は、今日祐樹さんにジャガーノートの方の調整をして欲しくて…」


「それなら、別に俺の個人ラボの方で待っててもいいんだぞ?」


「いえ、家主が居ないのに勝手に入る訳には……」


 と、理由をつけて断っているが、ただ一緒にいたいだけである。


「あ、それじゃあ私もいい?」


「花火先輩まで………」

 

 沙綾に便乗するように言う花火に、ため息を吐かずに入られなかった。


「……まぁ、一人するのも二人するのも一緒です。それじゃあ待っててください」


 と、言うと、祐樹は美冴の元へ行った。


「ごめんね、急に予定ねじ込んじゃって」


「全くです。今度またなにか特例お願いします」


「しょうがないなぁ。あんまり無理なもの意外だったらね」


 え?いいの?と8割ほど冗談で言ったのだが、まさか受理されてしまうことに驚いた祐樹。


「それじゃあ、御三方とギルドリーダーがお待ちだから、早速またまた通話を繋げようか」


 と言うと、電源の落ちた電子黒板に、再び三つの校章が現れるが、ビデオ通話に変わったのは椿原学園の校章だけだった。


「初めまして、小鳥遊祐樹くん」


 推定、60は超えてると思われる老人。その隣には、椿原学園の制服を着たヒロインが立っていた。


 白を基調としたワンピース型の制服。デザインは瑠璃学園と似てはいるが、やはりところどころ違う。


「初めまして、高柳正五郎さん。こんな俺に興味を持つなんて、なかなか物珍しいお方ですね」


「ははは、何、そんなに自分を卑下するものでは無いよ、祐樹くん」


 自虐的な自己紹介を笑い飛ばした正五郎。


「さて……まぁ、話をするのは私ではなく、この二人だ。後は若いので話すといい」


 と、言うと。左右の少女が正五郎に向けて軽く肘で腹をつついた。


「……ゴホン、学園長が失礼した。ギルド『カンブリア』リーダーのアメリア・ロドリゲスだ。よろしくな、ミスター祐樹」


 椿原学園ギルド格付けランクSSS『カンブリア』リーダー、アメリア・ロドリゲス。アメリカ人らしく、スタイルも良く、高身長。肩までかかる程の銀髪に紅色の瞳の持ち主だ。


「ギルド、『ヴィクトリア』リーダーのフェリシア・コーネリアよ。よろしくね、祐樹さん」


 椿原学園ギルド格付けランクSS+『ヴィクトリア』リーダー、フェリシア・コーネリア。どことなく高貴な所が感じ取れる少女だ。腰ほどまである金髪と、碧眼の持ち主。


「先程も言ったが、小鳥遊祐樹だ。高等部一年生となる」


「あら、年下だったのね」


「だが、態度は別に改めなくていい。自然体で大丈夫だ」


 瑠璃学園と大きい違いだなと思いながらと二人を見る。


「それじゃあ、遠慮なく名前で呼ばせてもらうが、大丈夫か?」


「構わないわ」


「問題ない」


「助かる」


 実は、敬語があまり得意ではない祐樹。こういったフレンドリーな人達が話し相手は、個人的にも疲れないで済むので助かる。


「噂には聞いていたが、まさか本当に男だとはな」


「噂?」


 一体どんな噂か?と思い、ついつい聞き返してしまった祐樹。


「二年前」


 フェリシアの言葉に、胸が一瞬ドクン、と高なった。


「あなたがギフト『ルナティックレッドアイズ』を使い、暴走状態に陥り、瑠璃学園の三分の一が被害にあったという事件です」


「………そう、か」


 二年前。突如として瑠璃学園を襲った危険度SSS級の大型アビス。咄嗟のことで、誰も反応出来ずにいたアビスの襲来に、ただ一人、感じ取れる祐樹だけが、ジャガーノートも持たないでの特攻。ルナティックレッドアイズを用い、アビスとしての能力を用いてそれを倒したが、完全に暴走状態に陥り、止めようとしたヒロインに襲いかかった。


 アデル、ハルモニアや梨々花達の協力。最終的には神楽が全力で祐樹のことを抱きしめて、その暴走を抑えることができた。


「……そうか、幻滅してるだろ?そんなやつ」


 少し、悲しそうな顔で祐樹は言ったーーーーが。


「いえ、我々椿原一同は、祐樹さんに対してそのような感情は一切持ち合わせていません」


「………え?」


 帰ってきた反応は否だった。


「ミスター祐樹の行動は、賞賛に値する。暴走したのはいただけないが、その行動と、勇気は褒められはすれど、非難される謂れは無いはずだ」


 続けて、アメリアにも否定された。


「私たち、『カンブリア』と『ヴィクトリア』は、あなたの傘下に入ります」


「上手く使ってくれ、ミスター」


「………ありがとう」


 祐樹は、思わず笑みを浮かべた。

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