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初日ーーー②

 冗談を言い、裕樹をからかう二人に精神的疲労を感じながらも、さっさと退散したいため、ハルモニアの背中を押して、個人ラボへと押し込む。


「はいはい、この後俺、一応授業あるんだからさっさとしますよ先輩。それでは、真奈先輩」


「おう。またな。ハルモニアー、後で感想なー」


「はーい」


「はーいじゃないですから」


 シュー、と音を立てて閉まる自動扉。横にある電気スイッチを押すと、裕樹の個人ラボの全容が明らかになる。


「相変わらず、いつ来てもシンプルね」


「特に置くものとかありませんし」


 8畳ほどの広さはあるのだが、ジャガーノートの整備のための機械で殆ど埋められており、行動できるのは3畳ほどである。


「それでは、ササッと済ませましょう。そこにジャガーノートと手を」


「はーい」


 病院のCR検査台のようなものがあり、その気になれば人1人くらいならば横になれそうな所にジャガーノートを置き、慣れた様子で隣立てられているタブレットに手を置いた。


 裕樹が端末の置いておる机に腰を下ろすと、その端末にはハルモニアとジャガーノートの情報がウィンドウ状に現れる。


「やはり、初期設定から何も動かしてませんし、魔力もジャガーノートに馴染んでない………まぁ前のようなパフォーマンスはしばらく無理ですね」


 ハルモニアとジャガーノートの顔写真の間に、二つのグラフがあるのだが、ピンク色のグラフが、ジャガーノートとのシンクロ率を表しており、数値は85パーセント。黄緑色のグラフが、ジャガーノートがどれだけ所有者の魔力に馴染んでいるかの数値を表しているのだが、それは綺麗さっぱりゼロのまま。


「えー……まぁ、それは仕方ないかぁ」


 と、背後から残念そうな声が聞こえ、それに苦笑いする。


「とりあえず、まえのシャスティホルンの設定データがありましたので、それを綺麗に上書きしておきますね。何かあれば言ってください。優先的に処理します」


「ありがとー、裕樹さん」


 と言葉ともに、後ろからギュッ、と裕樹に抱きつくハルモニア。先程の言葉に、語尾に音符が付きそうな程に上機嫌だ。


「………何してるんです?」


「頑張ってくれる後輩くんのために、ご褒美だよ」


 と、そのまま頭をなでなでしていくハルモニア。一瞬、設定をしている指が止まりそうになったが、何とかそのまま動かし、キーボードを入力していく。隣では、機械の腕が忙しなく動き、何やらジャガーノートに色々と細工をしている。


「最近、どう?」


「どう?と言われましても……まぁ楽しいですよ」


「神楽姉様に聞いたわ。あなた、雰囲気が少し昔に戻っているって」


「………………」


 今度こそ、裕樹の手が止まる。


「ダメだよ。あの頃に戻るのは」


 強く抱きしめる。まるで、今度こそ裕樹を離さないようにするために。暴れる子供を必死に受け止めるように。


「信じてるからね、裕樹さん」


 最後に耳元で囁き、離れ、ジャガーノートを手に取るとそのまま部屋を出ていく。端末には、『コンプリート』と無機質に揺れる電子文字。


「…………すいません」


 その声は、ハルモニアには届かなかった。


 その後、全ての電源を落とし、部屋を出たあと、地上へと向かう。今日から裕樹も高校1年生である。中等部とは違う講義や、単位という制度まで出てくる。


 高等部校舎の入口には、たくさんのヒロインが分けられたクラス表の紙を誰しも食い入るように見ている。


 新高等部一年生の人数は150人。一クラス三十人の五クラスで分けられ、それぞれクラスは『薔薇』『桜』『秋桜』『梅』『菫』に分けられており、新人もエスカレーター組もランダムで入り交じるクラス分けとなっている。


「あ、小鳥遊さーん!!」


 そんな中、やってきた裕樹に気づき、ブンブンと大きく手を回すヒロインが一人。それに小さく手を振り返し、少し早足でその人物へ近づく。


「おはよーーーあ、ごきげんよう!」


「……ふふっ、ごきげんよう、朝凪さん」


 瑠璃学園は、お嬢様学校となっており、挨拶はごきげんようが一般であり、言い慣れていない菜々は、言い直した。


「小鳥遊さん、クラス分け見ました?」


「いや、まだ見てないけどーーーこれ、どういう現状?」


 周りを見渡すと、クラス分けの紙を見て落ち込む人と喜ぶ人がいる。具体的な割合で言うと、4:1の割合である。


「えっと……その、私もまだ来たばっかりで分からなくて……」


 あはは……と、頬をかきながら笑う菜々。アビスに寄生されているので、様々な所が強化させられている裕樹は、紙の方へ目を向けるが、人がたくさんで流石に見えなかった。


「それは、私の方が説明致しますわ!」


 と、人混みの中から出てきたのは、アンナと梨々花である。そして、二人ともどことなく誇らしげである。


「アンナ」


「アンナさん」


「二人ともごきげんよう!これはね、クラス分けの結果のせいなんだけど」


「裕樹様と同じクラスなれないことに、どうやら皆様落ち込んでいらして………あ、裕樹様、今年もよろしくお願い致しますわ」


「私もよろしくね!」


「ついでに私の方もよろしくお願いします」


「わっ!椎奈さんいつの間に!」


 ヌルッ、と現れた椎奈に対し驚く菜々。そんな菜々に対し、ごきげんようと返した。


「………と、言うことはここにいる全員同じクラスか?」


「えぇ、その通りですわ。何の因果か、昨日アデル様と討伐したメンバーはーーーーー」


「な、なんでですのー!!」


「ーーーー失礼、一名除いて、です」

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