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初日ーーー①

「………あ、そうだ。学園長」


「ん?どうしたのかね?」


学園長室のとある窓から天に向かって腕を伸ばしていた裕樹は、それを引っ込めながら振り向いた。


「少し、お願いーーーというか、特例を認めて欲しいんですけど」


「…………言ってみなさい」


「そういえば、皆さんは何科なんですか?」


アンナがポソりと呟く。


食堂にて、菜々は梨々花、アンナ、椎奈と合流し、瑠璃学園の誇る料理人が作った朝食を食べている。


同室である楓は、友達を見つけたのか、菜々に手を振ってから、別の人の所へ行ってしまった。


中等部から後頭部へと上がる際、ヒロイン達は三つの科を希望し、選択しなければならない。


「………えっと、何の科があるんですか?」


勿論、外部入学者の菜々は何も知らない。試験の際、色々と質問をされ、ジャガーノートとのシンクロ率を測り、勝手に科へ配属されることになる。


「まず、私とアンナちゃんが行くのは『強襲科』。主に、アビスと最前線で戦うための戦術やジャガーノートの扱い方を学ぶんだ」


「私や、昨日いらっしゃった真奈様がいるのが工作科。主に、ジャガーノートの整備や修理、修復、開発をやってるけれど、アビスとの戦いにも出ることはあるわよ」


「そして、戦闘向きではないギフトを持つヒロインがいるのが後方科の、全三つですわ」


瑠璃学園に所属するヒロインは、中等部含め800人前後。6割が強襲科、3割が工作科、残りが後方科の割合となっている。


「………あの、今の話に小鳥遊さんが出てきませんでしたけど……」


「……まぁ」


「裕樹様は……」


「色々と特別ですから」


「ぶえっくし!」


「どうした?裕樹くん」


「いえ、なんか鼻がムズムズと……」


そして、現在噂の裕樹は工作科に所属する真奈の後に続き、瑠璃学園の地下に向かっている。


瑠璃学園は地上三階、地下六階の構造となっており、地上が強襲科、後方科となっており、地下は専ら工作科のラボや個人ラボとなっている。


「そうか?あんまり無理するなよ」


「いえ、特に無理とかはしてないと思いますけど」


「強襲科と工作科の二つに所属しておきながら無理はしてないってどの口がほざいてるんだ」


「いえ、これは必要なことです。真奈先輩」


裕樹のジャガーノート、全てが漆黒で、男のロマンが詰まっている機体『ダインスレイブ』。


ジャガーノート製造会社で、フランスに社を置いており世界でもトップクラスの品質と強度を誇る『ケラウノス』社製で、ジャガーノートでも特別中の特別。


わざわざフランス本社まで赴き、そこで息のあった一人の製造社員とノリにノリまくって、色々と弄った結果、ものすごく複雑で二度と作れないような機能になってしまった。


そのため、工作科のヒロインに渡しても、手に負えないと言われ、大変ご丁寧に返却され、仕方なく、整備、修理、修復は全て裕樹自身の手で行っている。


その副産物として、ジャガーノートを弄る技術も手に入ってしまったため、強襲科と工作科の二つに所属した。


「多分、裕樹くんぐらいじゃない?強襲科も工作科にも所属しているのは」


「さぁ?過去にもいたんじゃないですか、そういう人ーーーーん?」


裕樹の個人ラボのある廊下に差し掛かると、ジャガーノートを持った少女が一人目に入った。


足音が耳に入ったのか、少女は『小鳥遊裕樹』と書かれた札から目を離し、音の発生源に耳を向けた。


「裕樹さん」


「ハルモニア先輩」


二年、強襲科所属、ハルモニア・ミカエル。瑠璃学園最強ギルド『ハミングバード』に所属している。


「ちょうど良かった。この時間帯なら会えるかなって思って……いま、手は空いてるの?」


「はい。誰も依頼は入ってなかったかと」


ハルモニアは、例外の一人で、特に裕樹に忌避感を持たずに接してきた数少ない先輩で、昔から、裕樹はハルモニアのジャガーノートの面倒を見てきた経歴がある。


「それで、どうしたんですか?」


「えぇ……この前の戦闘で、私のジャガーノートが全壊したの知ってるでしょ?」


「……あぁ」


『シャスティホルン』。槍型のジャガーノートだったが、三日前に持ち込まれた時は酷く無惨な姿をしており、コア部分から先がぽっくりといっていた。


「それで、今朝ケラウノスから届いたんだけど………あまりしっくり来なくて。調整、お願いできる?」


「分かりました。それでは真奈先輩、ここで」


「おう、あんまりハルモニアが可愛いからって襲うなよ~」


「襲いませんよ」


「え?襲ってくれないの?」


「襲ったら俺この学園に入れなくなるんですけど!?」

ポイント増えて嬉しみの舞です。

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