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龍介くんの日常  作者: 桐生初
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衝撃続きの龍介くん

しずかと龍介、それに亀一まで揃うと、京極はニヤリと笑って、漸く説明を始めた。


「まず、当初から予定してた、名画奪還作戦。

日本で個人所有になってた国宝の浮世絵が盗まれたんだが、その家のドラ息子が小遣い稼ぎに盗賊団を手引きしていた。

そこんちはやんごとねえお家柄の為、諸々の事情で公に出来ず、裏からの買い戻し作戦に出たが、上手く行かず、このフランス人の手元に渡っちまった。

来月、大々的な展覧会を控えているので、奪還には急を要するんだが、このフランス人も返さねえ、売らねえときた。

つー訳で強引に頂くという方針になった。

このフランス人、まあ、あまり身綺麗な方とは言えねえ。

マフィアとくっ付いてるとか、フランス当局もマークしてる人間なんで、バレたらそれ相応の抵抗は覚悟した方がいい。

で、このフランス人、黒髪の可愛らしい日本女性に目が無え。

で、しずかちゃんが適当に相手してる間にうちの丸山と御手洗が絵を頂く。

寅はそのサポートに入ると。」


「おい。」


龍彦の文句は聞かない。

話はもう次の仕事に移っている。


「で、もう一つは、今朝、日本人科学者がドゴールに到着。

この科学者、地球に関しての研究してる人なんだが、地球の寿命を割り出しちまった。

まあそれはいい。

どこも取り上げねえ様に、図書館が根回ししてくれてっからな。

問題はその先。

自分の研究が相手にされねえもんだから、色々探り出したらしい。

で、日米が地球見限って宇宙開発してんじゃねえかという所まで嗅ぎ付けちまった。

しかし、その後がいけない。

その調査結果や地球に関する研究データを、どういう訳か中国に売ろうとしてるっぽい事を図書館が掴んだ。

で、今夜、科学者の宿泊ホテルで中国人と落ち合うと。

だから、そのデータだのなんだのを中国人に渡す前に、その科学者のパソコンから証拠データと中国とのやり取りの証拠を盗み、中国人に偽のデータを渡した所で、科学者を確保と。

それでだ、龍介君。」


「は…?俺?」


「そう君。この科学者、50にもなって独身。なんか妙な性癖は無えかと瑠璃ちゃんに探って貰った所、美少年マニアで、その手のサイトやいかがわしい店に頻繁に出入りしてるんで…。」


なんだか嫌な予感がする。

龍介は後退り、京極は前に出てニヤリと笑った。


「君が科学者を垂らし込んで、気を逸らせてる間に瑠璃ちゃんが室内に入って、科学者のパソコンデータを抜き取り、こっちへ送信て手筈だ。真行寺、お前は2人の親を装い、科学者の滞在ホテル行け。アランと高坂が付く。寅はこっちのサポートもやる。では開始。」


龍彦がギロリと睨む。


「ちょっと待て。寅彦君にいきなりそんな重い任務を?それに瑠璃ちゃんと龍介にそんな危険な仕事…。」


「だからお前が一緒行くんだろ?いよいよ押し倒されそうなったら、適当に襲撃しろよ。俺はしずかちゃんの方に着く。いいな?」


ちっとも良くない。

龍介は真っ青になって、ブツブツ言っている。


「なんで…。どうして俺がオカマのおっさんの相手…。」


「京極!また熱出したら、どうしてくれんだよ!」


「大丈夫、大丈夫。きっと向いてるぜ。この2人の息子なんだからな。真行寺、そっちの指揮も頼んだ。じゃ開始。」


寅彦と瑠璃は、そんな嬉しそうな所なんか見た事無いというように、目を爛々と輝かせて、京極のチームメンバーが驚く勢いで仕事をこなしている。


ー寅彦君と瑠璃ちゃんはやる気満々だな…。残すは…。


龍介だ。

しずかはゲラゲラ笑いながら京極に言われて着替えに行ってしまったし、もうこの状況では、やらなければ国家の危機になってしまう。

ここは龍彦がなんとか慰めて、どうにかモチベーションを上げさせねばならない。


龍彦は真顔で龍介の前に立った。


「龍介、あの…。龍介の貞操はお父さんが守るから…。」


更に真っ青になる龍介。


「お父さん!?俺は貞操の危機なの!?」


亀一は吹き出している。

龍彦も頭を抱えた。


ーそうだった…。男女間の事も分からない化石少年だったんだ!


「ええ~っと…。あの…。だから、その…。その科学者をだな…。その気にさせて…。」


「その気とはどの気!?」


亀一と鸞、大爆笑。


「そ、その科学者は女の人より、龍介みてえな可愛い男の子が好きなんだよ…。」


「それは今聞いたけど!?」


ーああ〜!この子はどの程度分かってて、どの程度分からないんだああ~!


「ーだから龍介も、そのおっさんが好きと見せかけて、龍介に大注目させておいて、瑠璃ちゃんが作業すると。分かった…?」


「分かったけど、気持ち悪い…。」


「だ、だよな…。」


「なんでオカマのオッさんと仲良くするのが仕事になるんだよ…。」


「ええ~、つまり…。」


「つまり?」


「国家の危機なんだ!龍介!それを防ぐには先ずオカマから!」


「ま、先ずオカマからなのか!?」


「そうだ!」


「ー先ず国家反逆罪の科学者からと言うべきなんじゃねえのか!?お父さん!」


「分かってんじゃねえかよ!つまり、その犯罪者がオカマだってだけの話だ!大抵は女が好きだから、この先は大丈夫だから安心しろ!」


論点がドンドンずれて行っているが、龍彦も龍介もパニック状態で、本人達が一番訳が分からなくなってしまっているのだった。


「じゃあ、細かい段取りの作戦会議に入るから、瑠璃ちゃんも来てくれる!?亀一君!君は両方の作戦を頭に入れといて、寅彦君のサポート!」


亀一は気の無いような返事をしたが、満更でもない。

それに逐一、龍介の天然ボケっぷりを知れるのは面白そうだ。


そして、いざとなると、悔しいが、龍彦は凄い人だった。

この僅かな間に、完全な計画を立てて、指揮している。


ー敏腕スパイってほんとなんだな…。


まだ青ざめている龍介は少々不安だったが、作戦は開始された。



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