62話 《完》結末を変えたのは私②
「フェルナンド様は、ティアのことが好きなんじゃないんですか? それなのに、私と離婚しなくていいんですか?」
「……俺がいつ、ティアを好きだと言いました?」
「違うんですか?」
「ティアは聖女として信頼していますし、大切な存在だと思ってはいますが、それだけです。大体、ティアが好きなのはジークでしょう?」
「そうなんですか!?」
小説では、ティアはフェルナンド様を好きだったのに……!
「ティアには多くの縁談が舞い込んでいますが、全て断って下さいと言われました。ずっと傍で自分を支えてくれたジークと、一緒にいたいそうです。今や、世界に平和をもたらしたと言われる聖女と、平民のジークが結ばれるには障害が多いでしょうが、ティアが望むのならば、グリフィン公爵家は全力で力を貸しましょう」
「私も! お父様にお願いします!」
お父様――モンセラット伯爵も、ジークの人の良さや仕事の出来に惚れ込んでいたし、喜んで力を貸すはず!
「これで、俺がティアを好きだという誤解は解けましたか?」
「は、はい」
(二人の幸せのためにも、私達は離婚した方が良いと思っていた。だけど、もういいの? フェルナンド様と離婚しなくても……いいの?)
私を地獄に落とす怖い人。
最初はそう思っていたのに、いつからか、愛情を感じるようになって、誤解しないようにって、推しとフェルナンド様の幸せのために気付かないフリをしていたけど、きっと私も、リーゼと同じように、フェルナンド様を好きになってしまった。
「フェルナンド様……無理矢理、結婚を迫って、本当にすみませんでした。許されることではないと分かっています。分かっていますけど……このまま、離婚せずに、私と……夫婦でいて、くれますか? フェルナンド様が、好きなんです」
転生して初めて、嘘では無い言葉で愛を伝えたら、フェルナンド様は一瞬、驚いた表情を浮かべたけど、そのすぐ後には、笑顔を浮かべて、強く抱き締めてくれた。
「頼まれても離す気はありません、貴女が私との結婚を望んだんですから、最後まで、俺の妻でいてもらいますよ」
「……はい、分かりました」
小説とは異なる展開。
ティアとジークのことだけじゃない、フェルナンド様のことも、闇の魔女との結末も、全てが変わった。小説の結末を変えたのは、私だ。
(私達は、離婚しません)
完
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