表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
離婚しましょう、私達  作者: 光子
離婚しましょう
39/62

39話 当て馬的モブ悪女になります③

 


「俺を避けていたのに、どういった風の吹き回しですか?」

「避けてなんていません。今だって、フェルナンド様に会いたくて、こうして来たんです」

「寂しいから俺に構って欲しかった、と?」

「そうです。フェルナンド様が大好きだから、仕事よりも、私を優先して欲しかったんです。フェルナンド様は、私と仕事、どっちが大切なんですか?」


 日本でも重めとされる痛い女の台詞を、ここぞとばかりに使う。どうです? こんな女、嫌でしょう? 離婚したくもなるでしょう?


 アルルやティアの時と違い、リーゼの設定を守れている気がして、調子が出て来た。


「私に寂しい思いをさせないで下さい、ずっと、私のことを一番に考えて、優先して下さい。一日に一回、愛の言葉を囁いて下さい、私を、大切にして下さい」


 フェルナンド様の目の前まで行き、彼の頬に触れながら、見つめ合うように言葉を告げる。


 調子に乗って、次から次へと言葉が出て来た。

 当て馬的モブ悪女になれないと不甲斐なさを感じていたけど、やれば出来る! っと、自信を取り戻しつつあった。


 そしてこの後、すぐに後悔することになった――――


「成程、分かりました」

「え――」


 腕を引かれ、椅子に座るフェルナンド様に跨るように、向かい合う体勢にさせられ、一気に、体温が上がる。


「な、この体勢は……」

「寂しい思いをさせてしまったみたいなので、反省しました。どうぞ思う存分、俺を堪能して下さい」

「無――」


 無理に決まってる。つい最近まで男性経験が無かった私に、何が出来ると?

 でも、ここで無理と言ってしまうのは、リーゼじゃない! リーゼなら喜んで、フェルナンド様と触れ合うはず!


「……っ」


 恐る恐る、ゆっくりと唇を近付けると、慣れない口付けを、自分からした。


「……どうしました? もう終わりですか?」

「いえ、まだ……です、けど」


 促されるまま、何度も触れるだけの口付けを変わすけど、それだけ。これ以上は、無理。もう、限界。


(やっぱり無理! もう帰る!)


 そう思って体を離そうとしたら、首筋に手を回され、強い力で抑えられた。


「んっーーっ!? んっ!」


 そのまま首筋を抑えられ、離れられない。さっきまでとは違う、深い口付けに、空気が足りなくて、眩暈がする。


「っぅ、やっ……!」

「……良かったですね、仕事中で。これで解放してあげますよ」


 唇を離されたことに安堵して、息を吐く。


(た、助かった)


「これからは寂しい思いをさせないように、定期的に、貴女の部屋に行きますね」


(悪化した――!)


 自分がする全ての行動が上手くいかなくて、絶望するしかなかった。




 ◇◇◇




「……リーゼは、何がしたかったのかな?」


 数日後、モンセラット伯爵邸の自室にて、再度、ジークを呼び出して相談する私。


「分かんない、何で? こんなはずじゃなかったのに!」


 ジークと向かい合って席についた私は、思わず、机に手の平を叩きつけた。


「もう諦めた方が良いといいと思うよ」

「駄目よ、諦めたら、小説通りに修正出来ないじゃない」


 感情が高ぶっている私に対し、温度差があるジークは、モンセラット伯爵家の侍女が持って来てくれたお茶を、笑顔でお礼を伝え、受け取った。フェルナンド様とは違う、人懐っこい優しい笑顔に侍女が頬を赤らめていたけど、やっぱりジークも女性に人気があるんだな、と、再確認した。


「暫くここには、誰も近寄らせないでね」

「か、かしこまりました」


 正反対に、私には怯えた反応。

 転生前のリーゼはモンセラット伯爵邸でも我儘放題だったから、未だに怯えられているんですよね。グリフィン公爵邸とは違ってたまにしか帰って来ないし、払拭する機会が無い。


「また人払い?」

「話の内容を聞かれたら困るもの」


 フェルナンド様のこともだけど、転生のことも小説のこともジークには話したから、ぴか一で相談しやすくなった。いや、それはそれとして、今は私のこと!


「どうやったら、フェルナンド様と離婚出来ると思う?」


 フェルナンド様とティアの幸せのためにも、私達は離婚しなきゃいけない。その為に、元のリーゼに戻って、フェルナンド様とに離婚を突き付けられようとしたのに、全く上手くいかない!


「転生する前のリーゼの話は聞いたけど、今の君は、元のリーゼに戻れないと思うよ?」

「も、戻れるよ」

「じゃあ、アルルやティアを虐められた?」

「それは……無理、だったけど」

「フェルナンド様にまた迫れる? 返り討ちに合ったりしない?」

「うっ」


 痛いところを的確に突いてくるジーク。そうです、全ての作戦はことごとく失敗しました。


「と、兎に角、私達は離婚します!」

「どうやって?」

「えーーっと、あ、そうだ! フェルナンド様って、世間体を気にして、私が浮気するのを嫌がってたよね? だから、私とジークが浮気しちゃえば――」

「リーゼは僕に死んで欲しいの?」

「死!?」


 物騒な言葉が飛び出して来たことに驚きつつも、そんな選択肢は初めからない。

 他に何も思い浮かばなくて言葉にしたけど、ジークに不貞を働かせるなんて出来ないし、そもそも私も、不貞行為を働くのは嫌だもの。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ