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離婚しましょう、私達  作者: 光子
離婚しましょう
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32話 フェルナンド様からのお願い

 


 ◇◇◇◇◇



 結婚生活七ヶ月目――


 転生してから七か月。

 こんなに時間が経ったというのに、私は今も、グリフィン公爵家でフェルナンド様の妻として、過ごしていた。


「全然、離婚の話が出てこないんだけど、どうなってるの?」


 グリフィン公爵邸の自室にて、机で肘をつきながら、独り言を呟く。


「簡単に、喜んで離婚に応じてもらってお終いだと思っていたのに……」


 離婚を拒否され、気付けば、ズルズルとここにいる。


(結局、星祭りのフェルナンド様の告白も、キングス侯爵が邪魔した所為で起きないまま、終わっちゃったみたいだし)


 離婚の後押しになる告白シーンを邪魔されたこともだけど、小説の中で私が大好きな挿絵を台無しにするなんて、大罪もいいとこ。


(でも、あれだけ歯向かったのに、特に何もしてこないんだよね。フェルナンド様に危害は加えないにしても、お父様の、モンセラット伯爵家には何かしてくると思って、警戒していたのに)


 キングス侯爵はプライドが高くて、傲慢。

 フェルナンド様に愛されていない私を公爵夫人扱いしておらず、格下認定している相手に歯向かわれるなんて、我慢ならない性格をしている。


 あまりにもお父様に迷惑がかかるようなことがあれば、平民落ちして、モンセラット伯爵家と縁を切ることも覚悟していたので、とりあえずは、ホッとしてる。


「――失礼します! リーゼ様、今、よろしいですか!?」

「アルル? どうしたの?」


 少し慌てた様子のアルルは、部屋に入ってくるなり、要件を述べた。


「旦那様がお呼びです、至急、執務室に来て欲しいと」

「フェルナンド様が?」


 珍しい、なんだろ? フェルナンド様が私を呼び出すのも、執務室に来いっていうのも、初めてじゃない?


「分かった、すぐ行くね」


 椅子から立ち上がると、すぐに、部屋を出て執務室に向かった。



 ◇◇◇


 フェルナンド様の執務室には、フェルナンド様とミセス以外に、ジークの姿もあった。


(ジークも?)


 ジークも呼び出された理由に心当たりが無いのか、顔を見合わせては、互いに首を傾けた。


「お二人に頼みがあります」

「頼み?」


 ジークと私、二人が揃ったのを確認したフェルナンド様は、私達に向かい、声をかけた。


「次のティアの聖女の活動に、二人も同行して欲しいんです」

「聖女の活動に?」


 ティアとフェルナンド様は、これまで何度も聖女の活動として、闇に汚染された土地に出向いているが、私やジークは一度も、聖女の活動に関与したことは無かった。


(なのに、いきなり同行?)


「理由はお聞かせ頂けるんですか?」


 同じことを思ったジークが、質問を返す。


「――次の聖女の目的地が、雪の降る地方の場所で、どうやっても、行くのにも帰るのにも時間が掛かる上、滞在もいつもより長くなってしまう、過酷な環境です」


( ( それは――ティアにはキツイな ) )


 っが、私とジークの共通の感想だった。


 ティアは何より心が弱い。

 ジークいわく、元から弱かったが、特に聖女になってしまってから、重圧に耐え切れず、すぐに倒れてしまうような子になってしまったらしい。


「本当は、もう少しティアの力や心が安定した後に、その土地に行く予定だったのですが、そこは本来、一刻も早く聖女の力を必要としている場所なんです。本当は危険な場所に一般人を連れて行きたくはないのですが……お二人が一緒なら、今のティアでも耐えられるのではないかと判断しました」


 闇に汚染された土地は、人が住むのも過酷な、劣悪な環境に姿を変える。

 フェルナンド様の言葉から推測するに、ティアの精神安定剤の役割りを担っている私達を連れて行くことで、ティアの心のケアを図り、聖女の活動を行えるようにする意図があるんだろう。


「危険な旅であることは理解しています、報酬は払いますので、一緒に来て下さ――」


「分かりました、行きます」

「私も行きます」


 フェルナンド様の言葉を遮るように二人で返事をすれば、フェルナンド様もミセスも、驚いたように口を開けた。


「そんなに簡単に即決していいんですか? 汚染された土地に行くのは、想像以上に過酷なものですよ?」

「そんな過酷な環境に、ティアを一人で行かせることは出来ません。僕は、ティアの力になるために、ここにいるんですから」


 ジークの言葉に、何一つ嘘偽りはない。ジークは心から、ティアを心配してる。


「私も同じ気持ちです、少しでもティアの力になれるなら、一緒に行きます」


 世界の安定を一身に背負ってしまったティア。その重圧を少しでも軽くすることが出来るなら、喜んで力を貸します!


「……そうですか、お二人の誠意に感謝します」


 手を胸に当て、頭を下げるフェルナンド様。

 公爵位なのだから、命令すればそれですむはずなのに、フェルナンド様は最後まで私達を気遣ってくれた。


 汚染された土地に行くこと――怖くないと言えば、嘘になる。

 でも、少しでもティアの、推しの力になりたい気持ちに嘘はない。私は、推しのためなら、危険な場所にも行きましょう!


 そう決意し、私は、聖女の活動に同行することを決めた。



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