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俯棺風景  作者: ししゃもふれでりっく
第十話 ゲヘナにて愛を謳う者達 上
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11



『北海道 現城主 アキラ が打倒されました。ギルド LAST JUDGEMENT が 北海道 の城主となりました。以後、 北海道 はギルドの設定した法令に従い運営されます』


 そんなアナウンスを聞いたのは九州に向けての旅の途中、九州と中国地方の丁度中間ぐらいを歩いていた時だった。


 近場にあった掲示板を確認すれば、ランキングからDEMON LORDの表記が消えて、代わりにBLACK LILIYという名が現れていた。以前、一度だけその名前が乗っていたような記憶がある。掲示板を眺めながら、さて、このBLACK LILIYなる人物は如何な死体を産み出すのかと考えていた所、


「鬼畜様、鬼畜様。そろそろ休憩しませんかぁ?」


 アリスが、がくっと肩を下げて疲れた様子を見せていた。


 一方、WIZARDはアリスの隣に立ち、あぁ、そろそろ超えられるわねぇとしみじみしていた。NEROとWIZARDの差は100余人という所だった。最近、人に出会っていないので暫くすればNEROに超えられる事だろう。地位と云うと語弊はあるが、この世界で一番人を殺し、一番Lvの高いであろうWIZARD自身は、前に言っていたように、それに対して全く思う事がないようだった。精々でへぇとかふぅんとか言っている程度だった。


「じゃ、先を急ぎましょう」


「流石、お姫様です……でも、どうか。どうか、か弱なNPCに慈悲を下さい。お願いです。お姫様ぁ」


 WIZARDの足に掴まって、アリスがくだを撒いていた。涙を流せるならば流していたであろうと思えるぐらいに潤った瞳で、WIZARDを見上げながら懇願していた。


 そんなアリスに、WIZARDは蟲を見るような目を向ける。


「シズぅ?そろそろこの自動人形解体して良い?」


「今度は、NPCの皮膚でも使って防具を作る気か?」


 先日までちくちくと裁縫していたのも終わり、WIZARDはお手製の白いローブを身に纏っていた。ローブの内側は以前のセーラー服に似たものではなく、スーツにでも似合いそうな白いブラウスだった。下はその白い脚をこれでもかと見せつけるようなショートパンツに、オーバーニーソックス。そして、悪魔の皮で出来た黒い編上げのロングブーツという似合っているのか似合っていないのかは分かり兼ねるが、そもそもWIZARD自身の素材が良いので何でも似合うといえば、そうだった。


「そんな悪趣味な事するわけないでしょ。どこの猟奇殺人犯よ」


 ため息交じりにハァと告げてそのブーツに掴まっているアリスを蹴りあげる。STRは大してあげていないらしいが、それでもLv5のアリスには強かったのか、ひゃぁ、と変な声をあげてアリスが蹴飛ばされた。


「あれぇ、おかしいなぁ。この二人おかしいなぁ!?こんなに可愛らしい子にこんな無碍な扱いするなんてっ!」


 毎度、毎度飽きないのかと思うが、アリスは小煩かった。


「でも、良いのです。お姫様にはこの服作って貰いましたし!いやー、ツンデレさんですねぇ、お姫様。私の事好きならそうと言ってくれれば良いのに」


「シズぅ?螺子の緩んだ人形の螺子を締めるにはやっぱり、一度解体しないといけないわよねぇ?」


「是非、止めてくれ。何度も言うようだけれど、僕はNPCの死体に興味はない」


 ため息一つ。


 確かにアリスの服はWIZARDが作ったものだった。アリスの事を人形扱いしている彼女の事である。ただの等身大の着せ替え人形扱いじゃないだろうか。もっとも、あの日聞いた言葉からすれば人形を相当に嫌っているはずだが……。手間暇かけてアリス用に服を作っている辺り、アリスに対してだけは思う所が出て来たのかもしれないが……はてさて。12時を超えた彼女に聞けば真っ当な返答が返って来るだろうか。どうだろう。


「このドSっぷり!流石です、鬼畜&お姫様!新しかった扉も、もはやがばがばで中古ですよ!ウェルカムにも程がありますよ、お二方!もう修理は効きませんよ!」


 十分、元気なようだった。


 そんな元気な声で延々と喋っていれば、誰かに見つかるかもしれないという事を考えていない辺り、僕達は長い時間人に会ってなかったのだろう。


 突然、アリス目がけて、弾丸が飛んできた。


「うひゃぁ!?」


 パラパラと鳴るこの音からすればサブマシンガンだろう。


 その発生源であろう場所に向けてMP5の引き金を引く。いい加減、他の武器に変えたいところだが、DEXの所為で特にこれでも問題ないのが実情だった。FN P90は欲しいが……と、うひゃ!?うひゃ!?言いながら器用に銃弾を避けているアリスに目を向ける。存外、生存能力の高いNPCである。


「めんどくさ……シズぅ、宜しくぅ」


 一方、弾丸を喰らってはいるものの、毛ほどもダメージが通っていないWIZARDは頭をぽりぽり掻きながら気だるげな表情でアリスを引っ張って、自分の後ろへと隠す。


「ありがとうございます、おツンデレラ様!」


「……」


「痛っ!?痛いですよお姫様ぁぁぁ!?脳が、脳がぽろっと口から流れ出ますよ!?」


 無言でアリスの頭を掴むWIZARD。ミシミシという音が聞こえて来た。力加減が適切なのだろう。壊れる事がないのならば気にする必要もない。


「この辺りだとやっぱりROUND TABLEのメンバーかな」


「だったら何だって言うのよ、らしくもない」


「いや、別に誰でも良いが、こんな乱雑な攻撃では碌な死体が出来ないと思ってね。マスターはあれだけ期待が持てるというのに」


「らしくも無いと心配したら、らしさ満点だったわ。というか何よその浮気発言。殺すわよ」


「後ろから刺されるのは勘弁願いたい」


 『シズ兄ちゃんはいつか後ろから刺されるよ!賭けても良い!』などと妹に言われた記憶がある。僕が何をしたというのだろうか。しいていえば、同級生の女の子に一緒に遊びに行こうと誘われたのを、死体展があるので遠まわしに断ったぐらいである。それを伝えた時に言われたのがその言葉なのだが……ともあれ、その発言をした妹が微妙に嬉しそうだったのが更に解せなかった。


 まぁ、そんな事はさておき。


「……とりあえず」


 殺すとしよう。


 こんな乱雑な射撃で殺された死体なんて酷く醜いに決まっている。だったら、それを作り出す人間など死んでしまった方が世の為だ。


 アリスをWIZARDに任せ、銃で牽制を入れながら凸凹したアスファルトを走る。所々、アスファルトの割れ目から咲いたタンポポ。そんな小憎らしい演出に苦笑が浮かぶ。こんな薄汚い廃墟で出来た世界でも生命は力強く生きているのだと、そう言わんばかりの演出だった。


 皮肉である。


 これから人間を殺す者にそんなものを見せるこの世界はとても残酷だ。そう思う。


 そう思ったとしても、僕はそれで後悔を浮かべるような類の人間ではない。そういう発想が出来る人間を羨ましいとさえ思う。もっとも、今の自分に満足している以上、そうありたいとは思えないのだけれども。


 弾丸が頬を掠める。


 風圧で髪が揺れる。


 抜けて行った弾丸が、そのタンポポをアスファルトごと世界から消滅させた。


女王リンカの部下なんざさっさと死んでしまえ!」


 タンポポの消滅と共に、声が聞こえた。


 だみ声だった。


 その声の聞こえた方へ、視線を動かす事もなく、銃口を向け、引き金を引く。パラパラと鳴り、鳴り止んだと同時に、


「リロード」


 呟き、間断なく銃弾を撒き散らす。


「おい、なんだよあれ!?なんなんだよ!あの武器!」


 更に声。


 先に聞こえた声とは反対方向。そちら側に、取り出したCz75を向け、引き金を引く。


 両腕は水平。これで前方から、後方から敵が現れたら目も当てられない。だが、そういう懸念は案の定、外す事はない。


 前方から、男女の群れが現れた。誰も彼もが高級そうな装備に身を包み、槍を、剣を、銃を、弓を持って僕に相対する。


女王リンカの部下なんざ一人残らず殺しちまえぇぇ!」


「おぉぉぉぉ」


 雄叫びをあげながら、近接武器を持った男女が僕に向かってくる。その合間に弓が、銃が僕を狙う。なぶり殺しである。このままでは僕は死体を晒す事になるだろう。先程から避け切れなかった攻撃によってHPがどんどん減って来ている。相変わらず、VITがないのでHPは少ない。このままでは殺されてしまうだろう。


 無残で誰が見ても不愉快でどうしようもない死体を晒す事になるだろう。


 左右の敵も合わせて人数は十を超える。


 近距離で囲まれればすぐにHPは削り取られるだろう。だが、あくまで近づけられれば、の話だ。近接攻撃者が右から、左から同時に、槍を、剣を振るう。


 後方に逃げれば左右からの攻撃にやられるだろう。であれば、と一歩前へ向かう。


 死地に近づく。


 がきん、と背側で槍と剣が交差する。


「連携の練習が必要だな」


 戯言を口にしながら、MP5を鉛直にたてて引き金を引けば男女二人の顔が吹き飛んだ。噴水のように血が昇り、重力に従って落下してくる。甘んじてそれを受け止め、一瞬、呆然とした他の敵の懐へ入り、胸元……乳房の形がはっきりとした何ともファンタジーな西洋鎧に包まれたその直下、心臓部に向けて接射する。


 からん、からんと空薬莢が地面に落ち、その度にその胸元の傷口が開いて行く。穴が開いて行く。


「リロード」


 計、何発だろうか。それに穿たれた胸元がっぽかりと飽き、血液を送るポンプの役割をしていた大事な器官が失われた。


 意識が無くなり、膝から崩れ落ちた死体。開いた穴の部分は、その傷口は汚いが、それでも、多少は綺麗な死体が出来あがった。その事に少し満足すれば、『てめぇ!よくも---を!』そう叫びながら遠方から弓を放っていた男が駆け寄って来た。


 馬鹿だった。


 感情に任せて自分の得意とする距離から移動する。そんな馬鹿な奴に僕があげられるとすれば、やはり銃弾しかない。


 Cz75 1st。


 その引き金を引く。


 タン、と一発の弾丸が顔面を破壊する。


「なんだよあの威力!ふざけんなよ、ハンドガン一発であいつが死ぬなんてっ!おかしいだろっ。何だよ、チートかよっ!?」


 左側、隠れて銃を撃っていた奴から戯言が聞こえる。


 そんな事を口にしている余裕があるのならば、その余裕の合間に僕に一発でも直撃させれば良いというのに。


「さて。少し聞きたいんだが」


 頭を振って髪に掛った血を軽く飛ばし、指を通す。整髪料というには色も匂いも最低だった。次いで、顔面を袖で拭う。


「君達は、ROUND TALBEで良いのか?」


 視線を左側に向けながら問うた。


「黙れよ化物!うるせぇよ!」


 当然の如く返って来たのはそんな言葉だった。ある意味納得の返答ではあった。仕方ない、とため息を吐きながらその男へと銃弾を放つ。


 MP5の空薬莢が五発落ちる間に、その男は息絶えた。


 続いて右側へと銃口を向ければ、両手をあげて男女のペアが出て来た。


「ゆ、許してくれ!お、俺はもう手をださねぇ。だから、殺さないでくれよ!俺だけでも助けてくれよ!女が欲しいならこいつをやるからさぁ」


「あ、あんたどういうつもりよ!私を売るって言うの!?最低!見そこなったわよっ」


 煩い。


 そうやって僕を無視して互いに罵声を浴びせかけ始めた。姿を現した時は仲睦まじい感じすらしたというのに。男が女を背にやり、守るようにしていたというのに。まぁ、だからどうだという話だが。


「とりあえず、聞きたいんだが、君達はROUND TALBEで良いのか?」


「い、いや。俺達はもう……ってあんたROUND TALBEじゃないのか!?」


 意味が分からなかったが、襲われた理由は見当がついた。


「わ、私達は、ヴィクトリア様を主君とした新生ROUND TABLEです。リンカなんかの所とは違います」


「…………内乱か」


「以前のマスター……リンカにはもうついていけないと集まったのが私達です。今はまだそんなに人がいないし、表立って動けないんです。ゲリラみたいな行為で少しづつROUND TABLEの数を減らしているんです。あそこは春様がお亡くなりになってから管理がザルなのでそれぐらいじゃばれませんし……元々適当に集まって適当に好き勝手やるギルドでしたから」


「お、おい!最重要機密だろ!?それに今は作戦中だぞ!」


「どうせもうすぐヴィクトリア様が動くのよ!関係ないわよ!」


 よく喋る女だった。僕に殺されるかもしれないと思って恐怖を感じているのだろう。聞いてもいないのに勝手に自分達の内情を話していた。表立って動けないのならば、こんなのを他人に言うべきではないだろうに……多分、きっとこの子は阿呆なのだろう。そう思う。


 とは言っても、ありがたい情報だった。


 もっとも、ここまで来た理由が全く皆無になりそうな情報でもあるのだが……


「春というプレイヤーは死んだのか?」


「……はい。春様は円卓の一人に……いいえ、春様の事が邪魔になったリンカがルチレと共謀して殺したに違いありません。ヴィクトリア様もそう言っておられました。ヴィクトリア様自身もそれを知ったから罪を着せられて殺されそうになったって!」


 話続ける少女。その隣に居た男は手持無沙汰そうだった。僕の方を何度もちらちら見ているだけは分かったが、特に抵抗する気はないようだった。彼や彼女が時間を稼いでいる内に他の仲間が僕を襲うという事もなさそうだった。


 ため息一つ。


「そうか。会ってみたかったが、死んだとなればこれ以上ここにいる理由も無いか……」


 アリスの記憶に引っ掛かった春という人物。『彼』に繋がる情報が手に入ると思ったが、会えないなら意味も無い。


「あの、もしよかったらで良いんです。お兄さんみたいに強い人に……是非……そのお力を貸して頂けませんか!?襲ったのは謝ります。何でもしますから……私にできる事ならなんでもしますからっ。春様を殺したリンカへの復讐をっ」


 激昂するように少女が言う。


 この子にとって、その春というのは特別な存在だったのだろう。


「興味は―――」


 だが、そんな彼女のために僕が何をしてやる理由も無ければ興味もない。これからの事を考える必要があるなと思いながら、拒否の言葉を伝えようとした時、


「シズぅ?まだ終わんないの?あと2人でしょ?さっさと殺しちゃえば?ってか何よその女。また浮気ぃ?雑食にも程があるでしょう」


 ローブの裾を掴みながら背に隠れているアリスに対して鬱陶しそうにしっしと犬を払う様にしながらWIZARDが歩いて来た。


「WI……WIZARD!?だ、だったら、この死体みたいな顔した人って―――」


 失礼な言葉だった。


「あら?貴女どっかでみた顔ね?春とかいう辛気臭い奴の部隊にいた奴かしら?」


「リンカの奴の!さ、刺し違えてでもっ!」


 突然、少女がナイフを構えて襲って来た。


 僕にぶつかりそうになった寸前。


 ぼん、と小さな音が世界に産まれ、少女だったものが肉塊になった。


「シズぅ?女遊びは大概にしないと刺されるわよ」


「妹にも同じ事を言われたよ」


「あら?見る目のある妹ちゃんね。紹介しなさいよ」


「この世界にはいないよ」


「それは残念」


 そう言ってWIZARDは肩を竦める。いたら殺すつもりだったのだろうか。妹の死体に興味は全くないが、妹の剣道の腕があれば綺麗な死体を作ってくれただろうか?WIZARDの腕を見事に落としてくれただろうか。そう思うと、少し残念だったが、しかし、妹が参加していなくて良かったとも思う。妹の死体なんて見たくも無いし、普通の子は普通の人生を生きれば良いのだ。僕みたいな産まれた時から死に興味を浮かべているようなおかしな人間とは違って。


「な、なぁ。お、俺はあんたに逆らうつもりはないんだ……だ、だからその……」


 再び、ぼん、と音を立てた。


「こういう人間は意外と面倒だからね。しっかり殺してあげないと駄目よ、シズぅ」


「それは良いんだが……君の所為で服が台無しだよ」


 少女と少年、その二人から飛び散った肉や血が僕の服に掛って大変な事になっていた。とりあえず、洗濯が次の目的かなと嘆息する。


「何よ。だったら私が新しいの作ってあげるわよ!」


「さ、流石です、お姫様。ここぞとばかりに家庭的な所をアッピールしていますぅ!」


 がん、という音と共にアリスが地面につっぷした。WIZARDの肘であった。


「カッターシャツと棒ネクタイというのが結構好きなんだよ」


「ふぅん。後はスラックスに皮靴かしら?」


 なるほどなるほどとWIZARDが僕の全身を見ていた。


「―――まぁ、僕の趣味はどうでも良いとして、だ。どうやら、アリスの言っていた春と言う人物は死んでいるとか。リンカというのとルチレというのに殺されたという事らしい」


「リンカが春を?うーん?長い付き合いじゃないけれど、何とも嘘くさい話ねぇ」


「君に人を見る目があるとはね」


「何よ。これでも顔色は伺う方よ?」


 伺う相手の顔がなさそうだった。


「怠惰っ子であるリンカが春なしでまともにギルドを経営できるわけがないでしょう。ストーカー気質でもあるし。あぁ、ストーカーといえば、あそこにいたとき、やたら隠れて私についてきた子がいたわねぇ……あ。ルチレってあの女の子か。ふぅん……うーん?あの子がねぇ。あの子が春を殺すなら、リンカのためって感じでしょうけれど、でも、そもそもリンカが春っていうのが私には……ねぇ」


「聞きに行くか?」


「別に。興味ないし良いわよ」


 その割には、真面目に悩んでいる様子だった。


「今、そのリンカというのから離れたヴィクトリアという奴が新生ROUND TABLEを作っているらしい……となると、戦争になりそうだ」


「何よ。戦争になるとリンカがやたらめったら切り殺すかもしれないから見に行きたいとか言わないわよね?」


 ……食指が動いた。


 何だか、誘導された気分ではあるが、確かに戦争となれば……


「一考に値するな」


「零考物よ。ま、まぁ、シズぅが行きたいなら別に良いけれど」


 一度でも関った者が死んだのは気に掛るのだろうか。それこそ彼女らしくはないと思うが……まぁ、何だかんだとWIZARDも行きたそうではあるし、とりあえずこの服を洗ったら当初予定通りに九州へと向かうとしよう。


「じゃ、行くわよ。ほら、人形。さっさと立ちなさい。置いて行くわよ」


「わ!わ!待って、待って下さいっ!おひめさまぁ!?」


 僕を置いて、二人が先へと向かった。


 てくてく、てくてくと進み、いつまで経っても僕が来ない事に業を煮やしたのか、二人がこちらを向いた。


 その瞬間である。






『ROUND TABLE所持 中国地方の城 が占拠されました。ヴィクトリア=ぷりん が 中国地方 の城主となりました』






 本日二度目のアナウンスが流れた。




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