#84 悠希のヒミツ?
悠希の上半身は全く凹凸というものがなく、それはまるで、男の子。
『えと・・・ずいぶんと胸が小さい・・・』
「ちげーよ」
優弥の言葉は奏太によってすぐに否定された
『え・・・じゃあ・・・もしかして・・・』
悠希は明らかに悔しそうな表情をしている。
「こいつ男。あんなにべったりくっつかれるとさすがに誰でも気付くだろ」
『・・・・・・・え』
体育の時、更衣室には悠希の姿が毎回無かったのはそのせいだったのだ。
「はなしてよっ!」
悠希は優弥に捕まえられていた手を無理矢理離した。
「そうだよ。男だよ。前の学校でバレたから転校してきたの!文句ある?!」
悠希は少々やけになっていた。
突然変わった悠希の態度に少し焦りながらも、優弥は悠希を見上げた。
『いや、別に無いけど・・・また、転校する気なの?』
優弥と奏太にばれたのでまた転校していくのだと優弥は思ったが、悠希はそれを否定した。
「するわけ無いじゃない!奏太君あきらめてないもん!」
『え、でも男・・・』
「心は女の子だもんっ!奏太君に一目ぼれしたんだもんっ!」
『まじですか・・・』
「だからっ!私奏太君あきらめないから!」
そう言って悠希は走って去っていく。
奏太と図書室に2人で取り残されてしまった。
『あ・・・』
奏太は帰ろうとして図書室のドアノブに手をかけている。
何も変わらないまま、奏太が行ってしまう・・・
そう思った時には走り出していた。
『奏太!!』
「?」
優弥は振り向いた奏太の首に腕を回して、思いっきり背伸びをして―・・・奏太と唇を重ねた。
勢いが付きすぎて優弥はそのままバランスを崩した。
優弥につられて奏太も図書室の地面に座り込む破目になってしまった。
そんなことは気にせずにそのまま奏太に抱きついた
『ごめんっ・・・信じてあげられなくて』
優弥の目から涙が零れた。
馬鹿なのは、自分だった。
奏太を信じずに、勇気も出せずにいた自分が馬鹿だった。
そう自覚した優弥には、ただ謝ることしか出来なかった。
『ごめんね・・・・』
「・・・」
だが、奏太は無言のまま立ち上がった。
(・・・やっぱり、もうダメなの・・・?)
涙が出そうになり、視界がぼやける。
だが突然、手が差し伸べられた
『え・・・?』
上を見上げると奏太は、優しい表情で笑み浮かべていた。
優弥でさえも見たことの無いその表情に、一瞬戸惑ってしまった
「・・・ほら、帰るぞ」
『・・・許して、くれるの?』
「写真のこと、お前に黙ってた俺も悪かったし」
優弥は差し伸べられたその手を、強く握り締めた。




