#155 本気?
放課後。教室には悠希と千秋と静香だけが残っている。
沈黙の中、先に口を開いたのは悠希だった。
「・・・優弥、私と付き合うってさ」
「別にいいんじゃない?どうせまだ奏太は好きだろうし。作戦は上手くいくよ」
千秋が鞄を持ちながら言った。
「そんなに上手くいくかな、あんたの作戦」
「どういう意味だよ」
「僕、結構本気なんだよね」
「は・・・?」
そして悠希は、意味深な笑顔を見せ、帰っていった。
気が付けば、12月23日。クリスマスイブの前日。
24日と25日の悠希は都合が悪いらしいので23日の今日、優弥は悠希の家に遊びに来ていた。
『メリークリスマース♪』
「・・・優弥」
他愛も無い話をして優弥がはしゃいでいると、悠希は突然優弥の肩をつかんだ。
『・・・?何?』
悠希は、心配そうな表情で優弥を見つめる。
『何、どうしたの?!悠希?』
悠希はそっと優弥に顔を近付け、キスをした。
『――――?!嫌っ・・・』
優弥は思わず、悠希を突き飛ばしてしまった。
『あ・・・』
そして、後悔する。
奏太の事は忘れると決めたのに、申し訳ないという気持ちがこみ上げてくる。
悠希は、優弥を睨みつけた。
「あんた、まだ奏太君好きなんでしょ」
『それはっ・・・』
「忘れるために私を利用しただけ?」
『っ・・・ごめんなさい』
「そんな中途半端な気持ちで付き合ってほしくない!」
悠希が叫んだ直後、優弥のケータイが鳴り響く。
千秋からの電話だった。
『あ、ちょっとごめん・・・・・・もしもし?』
電話の向こうからは、慌てた様子の千秋の声。
そして優弥は、耳を疑った。
『え、千秋、今・・・何て?』
「だからっ・・・奏太が駅前で事故ったって・・・」
優弥はすぐにケータイを鞄に放り投げ、チラリと悠希を見た。
「いいよ。どうせ奏太君のところでしょ」
『っ・・・ごめんねっ!!』
優弥は悠希の家を飛び出し、駅前に向かった。
外は雨が降っている。確か今日は雷だと聞いた気がする。
優弥は傘も差さずに、駅前に向かって、走り続けた。




