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なんど、死んでも毒から逃げられない令嬢が、 魔法使いに救われるまで……。  作者: にのまえ


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24話

 時刻は夕方。橙に染まった空が、ゆっくりと紫へ移り変わろうとしていた。いまからここを発たなければ、屋敷へ帰り着くころには夜更けになってしまうだろう。

 

 カーサリアル殿下は私から一歩離れ、静かに視線を合わせると、取った手の甲へそっと口づけを落とした。


「遅くまで引き留めてしまったな。ルルーナ、送っていこう」


 その声音は夕暮れよりも穏やかで、胸の奥に温かな熱を残す。


「嬉しいですが……殿下こそお忙しいのでは? このままでは、夕食のお時間を過ぎてしまいます」


「大丈夫だ。どこかで食事をとりながら送ればいい」


 まだ一緒にいられる――その事実に思わず口元がゆるむ。私の笑みを見て、殿下の瞳もやわらかに細められた。

 カーサリアル殿下とは王都の図書館で出会い、それが縁で屋敷へ招かれるようになった。


 出会ったばかりなのに……もう私の心を占める人になってしまった。けれど、私は呪われている。これまで九度、死のたびに時間が巻き戻された。


 ――いくら毒の勉強をしていても、また毒で命を落とせば七歳に戻り、殿下に会う前へ逆戻りしてしまう。

 たとえ同じように殿下と出会えたとしても、今日のように、親しくなれる保証はない。


 ――怖い。カーサリアル殿下の側にいたい。もう死にたくない。


「……ルルーナ?」


「あっ、私、シャロンを呼んでこないと」


「それなら心配はいらない。彼女は扉の外で待っているよ」


 殿下に手を引かれて外へ出ると、本当にシャロンが扉の前に控えていて、私の頬はかっと熱くなる。


「ルルーナお嬢様、その……すみません」

「ううん、気にしないで。ただ、慣れなくて恥ずかしいだけだから……帰りましょう」


「はい」


 「少し待っていて」と言い残し、殿下は一度部屋へ戻る。しばらくして姿を現した殿下の手には、せいちな装飾が施された杖が握られていた。


「ここは人目も多いし、俺は行動を監視されている――姿消しの魔法を使おう」


 杖が軽やかに振られると、足元に幾何学模様の魔法陣が浮かび上がる。

 次の瞬間、私達の姿は音もなく掻き消された。

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