表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんど、死んでも毒から逃げられない令嬢が、 魔法使いに救われるまで……。  作者: にのまえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/30

23話

 感情に流され、大胆なことをしてしまった――そう思うと、頬が熱くなる。けれど、カーサリアル殿下の笑みを見られたことが、何より嬉しかった。


(少しは……癒されてくれたかしら?)


 まだ冷めない熱を頬に感じながら殿下を見つめると、その目と口元がやわらかくほころぶ。


「ふふ……ルルーナは、けっこう大胆なことをするね。おかげで元気をもらえたよ」


「そ、それは……よかったです」


 トクントクンと胸がうるさくて、頬の熱も引かない。両親以外に抱きついたのは――初めてだった。


(……ものすごく恥ずかしくて、大胆なことをしてしまったわ)


 本来なら王子に触れるなど、不敬と咎められてもおかしくない。けれどカーサリアル殿下は怒らず、受け入れてくれた。そのことが嬉しくて……鍛えられた逞しい胸板の感触を、つい思い出してしまう。


(お父様とは違う……大きくて、温かな腕の中だった。もう一度、殿下に抱きしめられたい……)


「どうしたの? 頬の赤みが消えないね。ふふ。まだ何か、考えているのかな?」


「頬? あ、これは……恥ずかしいからですわ。ま、また、殿下を抱きしめたいなど……あ」


 思わずこぼれた本音に、自分で口元を押さえる。さらに頬が熱く染まっていく。カーサリアル殿下がククッと喉の奥で笑い、私の熱はますます冷めなかった。




 ――カーサリアルは、そのルルーナの姿から目を離せなかった。

 

 ルルーナはやわらかく、花のような香りがする。恥じらいながら「また抱きしめたい」と言う彼女に、胸の奥がじんと熱くなる。


 今すぐ抱きしめ、ベッドで抱きしめて眠りたい。だがそれは、ルルーナ、彼女の父である伯爵の印象を損ねるだろう。


 しかも、ルルーナには憎むべき婚約者がいる。


 ……それでも。


 気づけば、恥ずかしがる彼女を再び抱き寄せていた。


「あ、カーサリアル殿下?」


(驚いた声すら可愛い。ああ、たまらない……ルルーナが欲しい。だから、二度とあんなことは起こさせない。必ず守る……守って、俺のものにする)


「可愛い」


「え、あ……う……」


 驚きで開いた瞳を、ぎゅっとつぶって抱き返すルルーナが、また愛おしい。


「ごめんね。恥ずかしがるルルーナが可愛くて……抱きしめてしまった」


「う、うっ……」


 ――昔から、ずっと君だけを愛している。


 ⭐︎


 その頃、廊下の曲がり角にはシャロンの姿があった。扉の隙間からそっと二人を見て、思わずほっこりと微笑む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ