表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんど、死んでも毒から逃げられない令嬢が、 魔法使いに救われるまで……。  作者: にのまえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/30

22話

 会話を途中で止めたカーサリアル殿下が、ふと入口の方を見やる。と同時に、部屋の扉が開き、二足歩行の白いモコモコが、男の子を抱えて部屋に入ってきた。その姿を見たメイドは、小さく息を呑み、震えるように体を揺らし、涙ぐんだ。


「リム……?」

「あっ、お姉ちゃん」

「咳は? 熱は出てない?」


 男の子はこくりと頷く。


「ああ、よかった。カーサリアル殿下、感謝いたします。弟を助けていただき、本当に……ありがとうございます」

 

「まあ、毒を盛ったことについては怒りがある。だが、それはあいつらが悪い。君のせいじゃない」


 殿下は眉を寄せ、しばし沈黙する。そして、ふと何かを思いついたように紙を取り出し、地図を描き始めた。続けて近くの棚を開け、白い袋を取り出してテーブルに置く。


「それを持って、この場所へ行け。そこには薬に詳しいじじいがいる。奴らが気づく前に、ここを出たほうがいいな。ササ、姿を隠して王都まで出て、二人を馬車に乗せろ」

 

「かしこまりました。お二人の姿隠し用のロープをご用意いたします。……では、行きましょう」


「は、はいっ……」


 メイドは何度もカーサリアル殿下に頭を下げ、男の子を抱きしめ、ササと共に部屋を後にした。


 ――ササさんがいれば、あの子とメイドはきっと大丈夫。


「殿下、大丈夫ですか……?」

「え? ああ……大丈夫だよ。ちょっと、イラついてはいるけどね」


 苦笑しながら答えた殿下の目は、どこか痛みを堪えているように見えた。


 ――私に、何かできることはないかしら。こういうときって……誰かに抱きしめられると、落ち着いたりしない?


「殿下、こちらへ来てください」


「ルルーナ……?」


 ソファに座りながら、私は殿下に向けて両手を広げてみせる。それを見た殿下は驚いた顔をしたが……


「……大胆だね」


 そう言って、そっと私を抱きしめた。

 殿下は魔法を使った後のせいか、体はひんやりとしていて、私はその冷たさを包むように、ぎゅっと抱き返した。


「……わ、私、キッチンに行ってまいります」


 私たちの様子に、シャロンが慌てたように部屋を出ていく。


 二人きりになった室内に、静けさが満ちていく。


 ――恥ずかしい。やっぱり、ちょっと大胆すぎたかも。


 けれど、あのときの殿下は、何かに耐えていた。そんな姿を見て、少しでも元気づけたかった。出会ってから、まだ日は浅いけれど……私はもう、カーサリアル殿下のことが気になって仕方がなかった。


「ありがとう、ルルーナ。君は温かいね。それに――柔らかい」

 

「柔らかい……?」

「このまま、食べてしまいたくなるくらい」


「え、ええっ!? 私、美味しくなんてありませんわ!」


 私の慌てた返事に、ふっと殿下が笑う。そしてそっと離れると、私と目を合わせ、切れ長の目をすこし細めた。


 ゆっくりと顔を近づけ、私の頬に、そっとキスを落とす。


「……ほんとうは、唇にしたいけど。まだダメだからね」


 その一言に、私の頬も、胸の奥も、熱く染まっていく――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ