第四十五話 人類の過去 ②
遅くなりすいません!
ご報告なのですが、12.13.15.16の投稿が出来るかどうか検討中です!
申し訳ございませんが、ご了承ください!
「……貴方は何者なの!?なんか普通について来てたけど、誰?! 」
姉のユリは草木が生い茂るソニアへの道中で、ふと思い出したように声を上げた。
当然、彼は名乗ってさえいたがどういった想いで自分たちに助太刀したのかが分かっていない。
彼女は一歩一歩進むごとに疑問浮かび、だんだん不安になったのだ。
「名前ではなく、職業かい?旅人だよ。
ソニアに一度入国してみたくてね、色々なルートを探りまくってたら、見つけたんだ。
この国……村へ入る為には地下水路を通ればいいよ。 」
旅人……?それなら、話の筋が通っている。
取り敢えずのうちは、信用することにしようと思ったユリは深く頷いた。
要塞と化した高い壁のある村、ソニアは人が足りているらしく、門番が二人、武装して立っている。まぁ、今のご時世、村人が住んでいる場所を守るのは村長や、長の役目であるからに、あのくらいやってもいいかもしれない。
何せ、魔術師がいつ攻めてくるか分からないのだ。
彼らはこちらの領土を完全にまで奪い、人類を家畜として飼うつもりだ。そうならない為に、この村を屈服させる必要がある。
兄弟とシュタインは道中で一番見えにくく、隠れられる木々の下を潜りながら、門番達の視線を掻い潜ろうと四つん這いで地面を這う。
「姉上!!重いよ……なんで僕が背負わないとならないの! 」
「男は昔から女を背負うって決まってるんだよ! 」
「それは絶対意味が違う言葉だよね!? 」り
四つん這いのシンの上に乗っているユリは頭を伏せて、草木の上に頭が出ないように注意を払い、小声でシンの唸りに答える。
シュタインは二人の絡みに面白いと思い、黙って耳を澄ませ、手と足を動かした。
「この辺にそういや魔術師が出たらしいぞ!
なんでもクルリ村が焼かれたとか……! 」
「……マジかよ。あの辺は山の集落だから魔術師が気づかないようなところへ立てられているはずだぞ!? 」
門番達の隣を通っているので、彼らの話し声が丸聞こえだ。クルリ村は、ソニアの次の村だ。魔術師に気づかれて焼かれたとなれば、クルリ村に行く義理は無いだろう。
彼女は話を聞きながら頭の思考回路を回転させていた。
「この奥の壁の小さな穴が地下水路の入り口だ。そこでお願いなんだけど、ここを教えた代わりにシン君と言ったかな?地下水路に行ってくれないか?
多分、君のお姉さんと僕は行くにつれて狭ばって通れない場所があると思うんだよ! 」
彼の問いかけにシンは、何も咎めずに真っ直ぐ頷いた。
地下水路の入り口へ着くと、彼が言った通り入り口だけでもユリとシュタインは通れそうにない。ここは小柄なシンに任せるしかないと思い、ユリは心配そうに手を振った。
「じゃあ、行ってくるよ。速やかに潜入して、入り口の門を開ければいいんだよね? 」
「そうだよ。大丈夫、シンなら出来る!頑張ってね! 」
穴の中へ消えて行ったシンを見送ると、二人は門に一番近い木陰に隠れてシンの帰りを待つ。
ーーその間、彼が彼女へ問いかける。
「君の出身はどこなんだい? 」
「……ニィア村よ。数ヶ月前に滅んだわ! 」
朧げに表情を歪め、彼女は言った。
「そうかい……あれは悲惨だったね。
もっと早くに駆けつけていれば、あんな風にはならなかったのかもしれない。確か、たった一人の魔術師……だよね? 」
瞬間、彼女の頭の中には、急いで駆けつけきたシュタインが生存者を手当てして、食べ物を与えたりするなどの記憶が蘇ってきた。
あの場所で貴方がーー!?
「あ、貴方は……命の恩人? 」
「……そんな、大袈裟だなぁ!俺は人間として極く当たり前のことをしたまでだよ。 それに、もう泣いている君を見るのは嫌なんだ。あの時、家族が殺されて泣いていた君を慰めようとしたけれど、良い言葉が見つからなかった。ごめんね……」
その時の記憶も蘇るように、彼女の頭の中で鮮明に流れた。
なぜ、今まで忘れてたんだろう?
数ヶ月前のことなのに、覚えていて当たり前のことなのに。
「いいよ……私が弱虫で内気なのがいけないの。村に馴染めなかった私に手を差し伸べてくれた貴方は強くて、優しいのね。普通だったら、こんな女……面倒ですぐに捨ててしまうのに…… 」
彼女は初めて、弟と家族以外の人間を信用した。旅人シュタイン、彼は人を思いやる気持ちが人一倍強くて、魔術師に滅ぼされた村を助ける良い人間なのだ。
ーーそう、彼女の頭にはインプットされた。
「実は……すごい言いにくいんだが。俺、君を助けたのは偶然じゃなかったみたいなんだよ。 」
すると、彼は四つん這いになっているユリの手に触れて、優しく甘い声で囁いた。
「きっと、運命なんじゃないか?
俺は、胸が張り裂けそうなくらい……君のことが好きなんだ! 」
「え、それって、どういう……?! 」
突如、心拍数が加速して、大きな波打つ鼓動が体内へ鳴り響き始め、頬も赤く火照ってきた。
「君と真剣に付き合って、子孫を残したいんだ!今の時代、魔術師を超えるような人間を作らないといけない!それが、君となら出来るような気がしてならないんだよ……」
「なんの確証があってそんなこと……。でも、良いよ。貴方なら、村を助けてくれて、こんな私を好いてくれる貴方なら……」
シュタインの揺るがない情熱の心は、彼女へ届いたようだ。彼は安堵したように胸を撫で下ろし、彼女が見えない傍でニヤリと口元を歪めた。
ーー其の頃、シンは村の異変に気がついてきた。
静寂な上に人気も無い。速やかに門の扉の鍵を開けると言ったって、誰も居ないのだから簡単に開けられる。
「何だこれ……静かすぎる。それにーー」
彼が地下水路から道の方へ足を踏み入れた瞬間ーー黄金の剣が鼻筋と目の前に出現する。このままでは、頭が串刺しにーー直ぐさま、自分の速度を高めたシンは身体を捻るようにして剣の回避に成功した。
「あらぁ、外れちったよ。まぁ、武器なんて生成すれば良いだけのことさ。そんなことより、俺は水使いなんだ、もっと魔法を使わないとね!! 」
シンは悍ましいことを聞いてしまった。
彼の口から"魔法"というワードが出てきてしまったのだ。つまり、此奴は魔術師。
どう対処するかが、賭けになってくる。
魔術師は掌を地面につけ、ニヤリと嫌な微笑みを浮かべる。
ーー突然、彼の掌を中心に村中の床が凍りつき、建物にまで侵食した。
そして、賺さず取り出した拳銃の銃口をシンへ向ける。
「この氷で滑るから避けられないとでも……?僕は生憎、そんなに甘くないよ。魔術師!!」
あろうことか、シンは凍りついた足場に対して、減速を行わなかった。
そうさせることが魔術師の狙いだと瞬間の中で看破したのだ。
故に止まらず、むしろ体を滑らせて加速。3発の砲弾の間を縫うように動き、魔術師から繰り出される銃弾をを鮮やかに回避する。
そして氷の足場を用い身体を独楽のように一回転させながら、腰に差した剣を未だ遠い間合いにいる魔術師めがけて抜き放つ。
すると、一瞬で加速し、相手の背後まで奔り抜けた。
「……なッ!!人間か貴様ァ!! 」
続け様に発砲を続ける魔術師に、凍てついた瞳でシンは辛辣に一言紡いだ。
「人間だよ、お前らよりも優しい心を持って生まれた人間様だ! 」
瞬間ーー魔術師は戦慄の音を上げ始める。
シンの放った、たった一度の斬撃がーー突如として無数の斬撃に変貌して、身体中を斬り裂き始めたのだから。
膨大な量の血液を噴出し、彼は音を立てながら凍りついた地面へ崩れ落ちた。
氷に触れた血液が静かに時間をかけて凍っていく様から視線を外し、門の方へ向かった。
ーーガシャンッ!
大きな細長い板を取り外し、門を開けた。
すると、二人の門番が唖然とした表情でこちらを見つめ、剣ではなく両掌を向けながら詠唱を始めた。
やはり、最初から人間などいなかった。魔術師がソニアを極密に滅ぼしていたのか。
先手必勝で剣を抜き去ると、二人の魔術師へ速度の減速を行わずに真っ直ぐ、首を斬り捨てた。
「シュタインさんと姉上!何故かわかりませんが、ソニアは無人でした。けど、中に魔術師が居てーー」
「君のお姉さんなら、そこで寝ているよ。
君には永遠の死をプレゼントしようかな? 」
黒い笑顔を振る舞うシュタインは、地面に掌をついて力を解放する。
「え……は?え? 」
シンには未だ状況が理解出来ていない。
だがーー。
「ま、まさか……魔術師!? 」
そう、気付いた時にはもう遅い。
彼の掌から発言された大きな魔法陣からは、巨大な黒炎を身に纏う、漆黒の波動を放ちし龍が現れたのだ。
「君はせいぜい、此奴に焼かれて死ぬと良い!ユリは貰っていくよ、じゃあな!」
「……ま、待て!!姉上を返せ!! 」
進むべき道を、黒龍は閉ざした。どうやら本当にヤツを倒さなければどうにもならないらしい。
ユリを担いで、手を振りながら魔法陣の中へ消えて行ったシュタインから視線を外し、黒龍に剣を構えたのだった。
一話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
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@sirokurosan2580
今回は裏切りのシュタインと、洗脳された姉(´・ω・`) ですね!!シン君がどう取り戻すか、それが次回の見どころです!
それでは次回予告です!!
攫われた姉を救うべく、シンは迫り来る黒炎の龍を打ち倒そうと剣を振るうがーー!?
次回もお楽しみに!
【黒龍がよく出る理由】
龍って言ったら黒龍のイメージが強いんですよね。何でだろう……遊戯○とかでそれ系のデッキばかり使ってたからかなぁ……。
※しっかり他の龍も出す予定です!
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




