第百十話「帰還した学園で」
最近忙しくて執筆出来なかったです。
すいません!
俺達四人はプロの魔法師に昇格したという有り難い報告を貰い、更には戦闘演習まで参加させて貰って満を持した状態で学園へ帰還した。
ーー《平和派》拠点内。
古びた旧校舎は相変わらずで、《正義派》との戦いで壊れた部分の補修が板で行われている。内部へ入り、いつもの発明室へ向かうと、《平和派》のメンバーが集まっていた。
「お、夜十君!お帰り! 」
元気よく迎え入れてくれた風見は笑顔で口を開いた。
風見の言葉に反応して、全員が帰還した四人の方向へ視線を向ける。
「皆!プロの魔法師に昇格して、おめでとう!半年後に備えて、力を蓄えていこう! 」
それぞれが真っ直ぐな瞳で夜十を見つめ、首を縦に振った。
その表情を満足げに見つめ、夜十は風見の方へ向き直すと、不安な表情で口を開く。
「風見先輩、これからの学園を……」
「ああ、その話なら聞いたよ。さっき、新島さんからお願いされたんだ。伝説の魔法師のお願いとあれば、私は何でもする。だから、ATS魔法学園の学園長兼生徒会長は任せて欲しい。 」
新島隊長直々のお願いだ。今回の学園救出作戦で指揮を取っていた風見であれば、これから行われる魔法戦争に向けて、何が重要なのかを知ってくれているに違いない。
功績を認め、会ったこともない風見を信頼して、新島は学園長と生徒会長の話を同時に持ちかけた。
「風見先輩のことは僕らが支えます!僕ら全員が一丸となって、この学園の再建を目指しましょう。ついこの前まで生徒だったのに、教員になるのは不思議な気持ちですが……」
そう、夜十達は夜十達で別の話を持ちかけられていた。
指揮の腕を見込んだと言っても、完全に信用したわけではない。
そこで新島は魔法師に昇格したメンバーを、ATS魔法学園の教員にすることにしたのだ。
普通の勉学で得意苦手がある者は居るが、半年後に巻き起こるのは人間存亡を賭けた魔術師との大戦争。
普通の勉学が悪かろうが、魔法師としてアビスを倒す、敵を倒すことを教えられれば何の問題はない。
「そうだね、それで話し合いがしたいんだけどいいかい?これからの学園について、細かいことを決めておきたいんだ。 」
風見の提案に首を縦に振る全員。
これからの学園は、新島達のような大人が関与してくることは一切ない。
自分達が作り上げたい魔法師、理想形を決めて、少しでも近づけるようにするように努力するのは全員なのだ。
「それで、何から決めるんですか? 」
「先ずは派閥制度をどうするか、だよ。 」
KMC魔法学園では、三つの派閥に分かれていた。
平和を願い、世界が平和になる為に活動する《平和派》。
戦闘能力を高め、他を寄せ付けない強さを掴み取りたい戦闘狂が集う《戦闘派》。
自分の崇拝したい神、アビスとの共存を考え、戦闘を好まない者達が集う《祈願派》。
その派閥を丸ごと全て無くすか、無くさずに三つのままで行くのか、又は増やすのか絞るのか。決めることは山積みのようだった。
すると、今まで黙っていた黒が口を開く。
「俺は派閥制度は要らねえと思うぜ。ここは自由に魔法を学び、自らを鍛えられる場所ってんでよ。どうだ? 」
黒はきっと姉のこともあるのだろう。
所属していても弱さを理由に強さで傲慢を貫こうとする者も現れる。
ならば、全員が全員平等になる手段を取るべきだ。
誰かが偉くて、誰かが偉くないなんて、フェアじゃない学園に黒はしたくないのだ。
確かに強いことは凄い。
上に立てる理由としても明確だ。
だが、風見の様に戦闘向きではない力を持つ生徒だって居てもおかしくはない。
彼らは戦闘向きの魔法を使いたかったかもしれない。なのに、そうは生まれなかった。
その境遇を恨めと言わんばかりの扱いを受けるのは、正直言って可哀想だ。
黒が今掲げる正義にも叶っていない。
「派閥制度廃止の意見に反対は要るかい?私も派閥は要らないと思っていてね。黒君の様にお姉さんのことを考え……あっ、ち、違うよ?別に心読んだわけじゃ!! 」
細かい理由に対して何も語らなかった黒の諸事情を数秒で公にした風見は、黒の表情が歪んだことに驚きを覚え、怯えた様に言い訳をし始める。
「あ?読んでないのに分かるわけねえだろ!人と接してる時は心を読むなとは言われなかったのかよ! 」
「……うん、言われたことないな。悪いけど。 」
即答だった風見に待ち受けるのは、迫り来る鋭利な拳。
だが、それは寸前で受け止められた。
風見と黒の間を遮る様に一人が手を伸ばし、拳を止めたのだった。
「……沖、テメェ!邪魔するんなら、剣で勝負しろや! 」
「別に構わないけど、今は良くない。風見が悪いけど、黒も抑えようか。もう大人なんだから……」
"もう大人なんだから"この一言で夜十達は実感する。鬼の逆鱗に触れた黒の末路を。
それは、場を乱し、全員に迷惑をかけたからではない。沖にとって、大好きな人を侮辱されることは死ほどに重いモノ。
況してや、拳で傷物にされるのはガチ切れするには十分な理由だ。
「あぁ……悪かった。皆も悪い、続けてくれ。 」
潔く沖の凄みに負けて謝罪を連ねる黒。
すぐに謝罪を行なった黒にウンウンと首を縦に振って満足げにする沖は、次の標的へ視線を向けた。
「い、いや……待って沖!!分かったよ、魔法は使わない!ごめんなさいぃぃぃ!! 」
風見のお陰か、学園内での魔法使用は禁止になった。それと、戦闘も禁止。
決闘スタイルの一対一の戦闘で、教員に申し出をして受理されれば、魔法を使用して戦うことが出来るようになった。
そうすれば、自分の掲げる平和のために剣を振るう沖が買った恨みを晴らそうとしようとも、公の場で行うしかなくなる。
当学園は、卑怯なことをして勝利を収める輩は必要としない。
その他にも多数の議論を行って、決めた結果。
風見学園長率いるATS魔法学園の教訓はーー
「それぞれの正義」
自分が掲げる一番正しい事、自分の中に何か一つでもいい、信念を持つことで迫り来る大きな壁も絶対に乗り越えていける。
信念さえ折れなければ、負けは無し。
そして、気になる校則はーー
一、魔法使用は学園内で禁止。
非常時であれば事後報告で使用しても良いが、その場合はしっかりとした理由が必要になる。嘘をついても意味はない。
何故なら、風見が目を光らせているから。
二、学園内での戦闘も禁止。
学園内での争い事は原則上禁止。
どうしても倒したい敵が居るならば、お互いの同意を求めることになるが、教員に申し出をして受理されれば決闘スタイルの試合を行うことが出来る。
三、沖遼介を怒らせないようにしよう。
学園の敷地一つ分ほどの街が滅びます。
皆さん、気をつけて!!
四、教員連中全員が完全に教育ど素人です。色々と大目に見てやってください。
時には変なこともするでしょう。その時は優しい表情で「お疲れ様です」と哀れむと良いのではないでしょうか。
四つの校則の元、派閥制度は廃止に。
但し、学園内に居場所を求める人も少なくはない。
ということで、部活を作ることが出来るようになった。
これにより、居場所が無い人でも自分の趣味を共有出来る場所を自分自身で作ることが出来る。
生徒数がどうなるかも分からないATS魔法学園は、元革命派によって、全く新しいものに組み替えられた。
それが吉と出るか、凶と出るかはまだまだ分からないのである。
夜十は、任された新たな役職を忠実に遂行しようと拳を握りしめるのだった。
第百十話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。
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@sirokurosan2580
今回は教訓決めでしたー!
次回、
ATS魔法学園を宣伝する場所を設け、教員になった夜十達はオープンスクールをすることに。
KMCのこともあってか、人が入ってくることに不安を覚えていた風見だったがーー!?
次回もお楽しみに!
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




