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銀の姫はその双肩に運命をのせて  作者: 藤宮彩貴


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40/50

一万ユニーク記念・番外編その8 正体と告白

 キールはベッドに横たわっているようだ。

 室内は、薄暗い。

「王子の言うことに従え。いいな」

 バタン、と乱雑にドアが閉まる。従者はそう言い残すと、去った。

 自分がディアナだと知られてしまったら、どうしよう。治療が終わったらキールはきっと、大きな宿に泊まっている国使の本隊へと連れて帰るに違いない。そんなの、いや。グリフィンと一緒にいたい。グリフィン。グリフィン。ディアナは心の中でつぶやいた。

「こっちへ来い」

 キールが話しかけてきた。直立不動の姿勢で、ディアナはびくんと肩を震わせる。

「ようやく出会えた女だからな」

 なんだか、ずいぶん荒っぽいことばづかい。『王子さま』ではないような。キールは、生粋の王子さまだ。城下に出たとき、やわらかい喋り方をしていたものの、乱暴な口調にはならなかった。違和感を覚えたディアナは身構える。

「どうした、早くこっちへ来い」

 手招きをされるが、その手も違う。ごつごつとしていて、荒れていた。

「キールではないわね。グリフィン、偽者よ!」

 ディアナは被り物の布をするりと頭から取り去った。もう、逃げ隠れする必要はない。ディアナはドアを開けた。

「お、上物……」

 外で控えていた従者が目を(みは)る。

「おっと、ごめんな」

 静かに、けれど素早い動作で、グリフィンが拳で従者らの腹を突いて確実に気絶させ、持っていた縄で手早く縛り上げる。グリフィンは、突き放したようなそっけない口調だったのに、ディアナを細心細微な気配りで見守っていてくれたらしい。ディアナは感激のあまり、思わずグリフィンの胸に飛び込んでいた。

「ありがとう、助けてくれて」

 ディアナの身体を受け止めたグリフィンの顔は真っ赤だった。照れている。

「あ、ああ。で、部屋の中の偽王子は」

 ディアナを守るようにして、グリフィンは室内に入った。けれど、庭に面したほうの窓が開いていた。どうやら、逃げられたらしい。開け放たれた窓から入ってくるる風のせいで、吊るされたカーテンがひらひらと揺れている。

「……逃げたか。仲間を置いて」

 確かに、キールの声ではなかった。態度も。従者も。写真もないこの時代、王子の名前を(かた)ることは簡単だ。国使の宿泊に便乗した、町のごろつきか、盗賊の一味だったに違いない。

「どうしたのですか、これは」

 宿屋の夫婦が驚いてふたりを詰問する。当然だ。王子と思って招き入れた部屋の前には、従者が転がっており、王子らしき人物は闇の中に消えたあと。

「あれは王子ではなかった。キールのふりをして、悪さを働こうとする偽物だった」

「なぜ、断言できるのですか。王子さまのお顔や特徴など、我々、しもじもの者にはまったく分かりませんが」

 主人はグリフィンを(いぶか)しんでいる。

「キールの顔をよく知っているからだ。俺はキールの異母兄(あに)、第二王子のグリフィン。こちらは銀の国の王女、ディアナ姫だ」

「「はあ!?」」

 かわいそうに、宿屋の夫婦は声を裏返して数歩下がった。

「身分を隠していて済まなかった。迷惑をかけたくなかったが、結局厄介ごとが起こってしまったな。俺たちも町を騒がせている国使の一員なんだが、できるだけふたりきりでいたい。そういう仲なんだ。察してくれ」

「「あわわわ……」」

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