317.結び合う
告白だ!!イェエエェーッ!!!
ハッピーエンド描写は苦手ですが、全力でリア充を表現してみたぜ!!
ただ世界を守るよりも、自分がどうしても守りたい世界を守る方がずっと力が入るだろう?
「咲夜!!」
「えっ何!?」
着替えを終えて出てきたばかりの咲夜に、大樹は人目もはばからずに声をかける。突然のことに、咲夜はびくりと身構えた。
側にいる美香は祈るような顔になり、輝夜はニヤニヤと笑う。
大樹は心臓が口から飛び出しそうになりながら、しろどもどろと咲夜に告げる。
「咲夜、さっきの……その……白菊姫姿、すっげぇきれいだった。それに……白菊姫をすごくよく表せてたと思う。
俺、なんかもう思いっきり引き込まれて……その、ビデオも撮れなかった!」
「え……それってまずいんじゃ……!」
咲夜が、すまなさそうな顔になる。自分のせいでと思ったのだろうか。
(違う……言いたいことはこんな事じゃないだろ!!
しっかりしろ、俺!!)
大樹はパニックになりながら、何とか話を組み立てる。
「だ、大丈夫だよ……ビデオなら、他の人が撮っててくれたから。
それよりさ、俺、気づいたんだ!
俺は、自分でやろうとした役割もおまえを見てると忘れちまう!それくらいおまえが好きで、他の事なんか考えられないんだ!!」
途端に、咲夜がボッと赤くなった。
美香が最高にうれしそうに目を潤ませ、輝夜がヒューヒューとはやし立てる。
(い、言って……しまった!!)
大樹自身も、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
何もこんな時でなくてもとか、もうちょっとやり方があるだろうとか、頭の中の冷静な部分が盛大に突っ込んでくる。
しかし、走り出した気持ちはもう止められない。
大樹は緊張でカミカミになりながら、咲夜に想いをぶつけた。
「だから、今は正直にならせてほしい!
咲夜、俺と付き合ってくれ!!もっとおまえを見せてさらけ出してくれ!!でないと、おまえ以外なんてどうやっても素直に見れない!!」
言い終わると、しーんと静かになった。
大樹の胸の中で、心臓の音ばかりがバクバクとうるさく響く。それこそ、咲夜の返事を聞く邪魔になるほどに。
どうかいい返事をくれと、ありとあらゆる神仏に祈りながら咲夜を見つめる。
咲夜は真っ赤になって細かく震え、かすかにくねくねと悶えている。そして顔は、明らかに緩んでいる。
「だ、大樹……その、ありがとう。
でも、私……私じゃ側にいて……じゃなくて、えっと……!」
理性では断ろうとしているが、声は弾んで裏返っている。
頭ではだめだと言いたいのに、心が全力で喜んで抑えきれない表情。咲夜にとっても、これほど嬉しいのだ。
(いける!!咲夜も同じ気持ちだ!!)
その反応に、大樹はさらに弾みがついた。
正直、想いを告げてもフラれたらという不安はあった。その時こそ、自分は本当に周りの全てがどうでも良くなってしまうんじゃないかと。
周りの人から咲夜も同じ気持ちだと言われても、咲夜はしっかりしてるから自分とは違うかもとか、失望されたらとか思っていた。
だが、そんなことは全くない。
お互い喉から手が出るほど求めていたなら、後はその手をつなぐだけだ。
「咲夜、おまえを、本物の白菊姫にはしない!!」
大樹は、咲夜の手を両手でぎゅっと握って告げた。
「白菊姫は、心を許してどんな時も支え合える人がいなかったから、踏み外してしまった。それに、我慢してばっかだと限界が来るだろ、あの災厄の前みたいに!
俺は、咲夜と俺をそんなにしない!
俺も咲夜も、幸せになって満たされて、安心して使命に向かおう!
だから……付き合ってほしい!!」
その瞬間、咲夜の顔に見たこともない大輪の花が咲いた。
「大樹……私たち、恋していいのかな」
咲夜の手が、大樹の手をぐっと握り返す。もう片方の手も、菊の花弁が重なるようにたおやかに添えられる。
「ああ、いいんだよ!
むしろ、俺たちが絶対守りたい幸せを持たなくてどうするよ!?」
二人は今まさに、それを実感していた。
こうして想いが通じ合っただけで、二人の目に映る世界は全く違って見える。全てが輝いて、どんなことがあっても守り抜こうと思える。
想いを押し殺して守らなきゃと義務で思っていた頃とは、桁違いの意欲と情熱が洪水のようにあふれてくる。
今なら、この幸せを守るためなら、どんな苦難も苦ではない気がした。
「大樹……一緒に、守っていこうね!」
そう言った咲夜の顔は、今日のどの菊よりも美しく輝いていた。
「良かった……良かったわぁ、咲夜……!」
とびきり幸せな娘の姿に、美香は目頭を押さえた。強く強く結び合う二人の姿が、在りし日の自分と宗平に重なる。
宗平も一時、使命のために自分を押し殺そうとピリピリしていた。美香が今の大樹と同じように諭してカップルになった後、美香は高校の全生徒から、鬼の生徒会長が優しくなったと感謝された。
ようやく姿を現した宗平は、美香の思わせぶりな視線を感じてしどろもどろしている。
今の立派な守り手たる宗平があるのも、美香と支え合い幸せになった結果だ。
輝夜は、一人勝ち誇った顔で呟いた。
「あーあ、野菊様も分かってねーな。自分のやりたいことのために使命は継がなくていいなんて言ったら、あの真面目共はますます身構えるだろ。
使命と幸せは、こうして両立するのが一番なんだよ!」
野菊も咲夜と同じでバカ真面目だからな、と輝夜は思う。
ともかく、これを報告した時の野菊の顔が何より楽しみだ。




