吸血鬼さんバトルする⑩
「壁がへこんで半壊してる。それに、ドアも」
しかし目の当たりにした第一ホールの惨状は、予想していたより遥かに酷いものだった。
「何、あの赤いの……? まさか、血!?」
まさか、クラスメイトの誰かが流したのでは――そう半狂乱になる私を宥めながら、リルゼイがふと口を開いた。
「いや、これは恐らく、神獣のものだろうな」
「何で、そんなことわかるの?」
彼は血痕の付いた扉にある、3メートル以上はあろうかという大きなへこみを指さしながら答えた。
「あれだよ。大きなへこみがあるだろう? この血は恐らく、ドアに激しくぶつかった際に流れたものだ。つまり、血を流した者はあのドアのへこみとほぼ近いサイズと考えられる。君の学友が巨人族だったならともかく人間では、あそこまで大きなへこみは作れないだろう? それは、人間の死体を使用しているファー・ジャルグも同じだ」
「そっか……」
クラスの誰かが流した血じゃなくて、本当に良かった。私がそう胸を撫で下ろした瞬間、不意に左手を誰かに掴まれる。
「ひゃぁ!?」
突然のことに飛び上がり、おかしな悲鳴をあげる私。
恐る恐る掴まれた手の方を見てみると、そこには――。
「千恵!?」
「良かった……やっぱり、真由だったんだね」
全身に酷く怪我を負った親友の千恵が、瓦礫の中に身を隠す様に座り込んでいた。




