吸血鬼さんバトルする⑤
「え? でもさ、ファー・ジャルグを倒してくれるんなら、良い神獣なんじゃないの? もしかしたら、味方になってくれるかも! そうしたら、共闘とかも出来たりするんじゃないかな?」
ふと閃いた名案に、私は両手をぽんと叩くと、嬉々として二人に伝える。
けれど、それを聞いた二人の表情は思いのほか重いものだった。
「共闘? 味方? 絶対に無理だよ。だって、ブランシェが護るのは、精霊と幻獣にとっての正義と秩序だけだから」
俯き、目を伏せたまま、リントは静かに告げる。
意味を計り兼ねた私は、人差し指で優しく彼の頭を撫でながら、そっと話し掛けた。
「リント、今言ったよね? ブランシェが護るのは、精霊と幻獣にとっての正義と秩序だけ、だって。それって一体、どう言う――」
その瞬間、全身にびりびりと響く様な轟音が辺りに響き渡る。
ドォォ――……ンッ!!!
同時に、猛烈な土煙が巻き起こり、私やリルゼイ達の視界を奪っていった。
「一体何が起こってるの……?」
必死にリルゼイの胸に掴まりながら、私は尋ねる。そんな私を、リルゼイは優しくマントで包み込み、呟いた。
「精霊と幻獣にとっての正義と秩序が、人間にとっての正義と秩序とは限らない、ということだ」




