吸血鬼さん、今度はイン我が家⑨
(パパ、何か思い当たることでもあったのかな?)
妖精や妖怪等に詳しい父のことだ。きっと、何か閃いたに違いない。
私とリルゼイは期待を込め、彼の帰りを待った。
と、何やらドタバタと騒がしい音がするや、両手に溢れんばかりの図鑑を抱えて父が戻って来る。
私達は慌ててリビングのドアを開けると、何冊かを分担してテーブルの上まで運ぶ。
「いやぁ、重かった。助かったよ。ありがとう、真由、理人、リルゼイくん」
そう言って椅子に座るが早いか、早速、今持ってきた本の内の一冊を手に取り、ページを開き始める父。
「真っ赤な服の老人で、人間の体内に隠れたり出来る程伸縮自在な体をしている。加えて、その女性の体……それは恐らく死体か何かで、生きている女性ではないのだと思うのだけど。死体と関係があって赤い服を着ている老人、と……あった!」
父の言葉に思わず全員が集まり、彼の手元の本を覗き込む。すると父は、皆に見えやすい様、少しだけ本を掲げる様にしながら告げた。
「アイルランドの悪戯好きな妖精、ファー・ジャルグ……通称、赤い男。リントくんを襲ったのは、この妖精じゃないのかな」
そう言って父が指し示す先、其処には確かに昨夜私を襲ったのによく似た、真っ赤な服の老人が描かれていた。
(よく似てる……ううん、似てるなんてもんじゃない。 きっと、こいつだわ)
その絵を見て、私とリルゼイは益々確信を深める。
と、父がそのページに書かれているファー・ジャルグについての説明を読み始める。




