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吸血鬼さん、今度はイン我が家⑥
「彼氏の前でそんな河豚面を見せていいのか?」
私の頬や眉間をつつきながらも、楽しそうに笑う兄。恐らく彼も、心の何処かでは、吸血鬼と精霊との晩餐という有り得ない状況を楽しんでいるのだろう。
私の頬をうりうりとする力が何時もより弱いのがその証拠だ。
そうやって、私達兄妹がじゃれあっていると、リルゼイが一つコホンと咳払いをする。
「真由? 今夜は、リントが襲われた事件について話し合う予定ではなかったかな?」
少し苛立ちが混じった様な彼の言葉に、私ははっと当初の目的を思い出す。そして居住いを正すと、皆にリントが襲われた事件について話し始めた。
私が一通り知っている範囲での事情を話すと、家族で一番そう言う事に詳しい父親がテーブルに身を乗り出し、激しく興味を示す。
「成る程、昼間に学校でそんなことがあったんだね。お疲れ様、真由。その件、僕達も是非協力しよう!」
其処まで言うと、何処から取り出したのか、ノートと鉛筆を用意する父親。鉛筆をしっかり構えると、早速リントに事件の詳しい概要を聞き取っていく。




