表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のペットな吸血鬼  作者: 埜吹陸斗
25/81

お持ち帰りは吸血鬼で宜しいですか?⑦

「あの少女漫画脳め~!」


 私は踵を返すと、リビングで手を振る母親に向けてつかつかと歩み寄る。件の横断幕を指差しながら、母親に詰め寄ろうとした、その時。


「ちょっとママ! あの横断幕、一体どういうつもり――」


「何やら騒がしいな。敵襲か?」


 やや眠たげな男性の声がリビングに響き渡る。


 私が慌てて声のした方を振り返ると、そこには先程私を助けてくれた吸血鬼の青年が立っていた。


 しかもご丁寧に、先刻まではなかった、大きな黒い羽を広げた状態で。


 青年の予想もしなかった登場の仕方に、卒倒しそうになる私。


(何でいるのよ~! 起きたら上手く誤魔化しながら紹介する予定だったのに! しかも、羽! さっきはあんなの無かったじゃない!)


 私は半ばパニックになると、自分でもよく分からない言い訳を口走りながら、青年と家族の間に割って入ろうとする。


「ママ、お兄ちゃん! これは違うの! 仮装! そう、仮装だから! ほら、そろそろクリスマスだしさ! 皆で仮装して騒ごうねって!」


 しかし私よりも早く動いた人物がいた。


 母だ。


 母は私と青年の間に入ると、青年と正面から向かい合う。


 そんな母の姿に、青年の身を心配しつつも、内心感動を覚える私。


(ママ……いつも、突拍子もないことを言ったりやったりしてばかりいるけど、やっぱり母親は母親なんだな。私の前に立ちはだかって、守ろうとしてくれるなんて。どうしよう、凄く嬉しい。私もこれからはママを大切にしないと!)


 感謝と尊敬の気持ちを込めながら、私は母の背中を見つめる。


 すると、母は毅然と青年を見つめたまま、一言。


「ねぇ貴方、その羽本物? 触っていい?」


 母は、嬉しそうに問い掛けた。


 全力で脱力する私と兄には全く気付かない様子で、母はぺたぺたと青年の蝙蝠の様な羽を触り始めた。


(そうだ、少女漫画好きからしたら吸血鬼なんて定番中の定番、憧れの王子様か。けど、まぁ、これで良かった……の、かなぁ?)


 幸せそうな母の様子を見つめながら、彼が通報されなかった安心感に、ほっと胸を撫で下ろす私。


 それでも頭の中では、最早彼の正体がバレてしまった以上、事の顛末をどうやって説明しよう――そんな不安が燻り続けているのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ