お持ち帰りは吸血鬼で宜しいですか?⑥
「いやぁ、心配してたんだぜ? 可愛い妹がばーさんになっても、彼氏いない歴=年齢のままでいるんじゃないかってさ」
失礼なことを愉快そうに笑いながらのたまう兄。
「超失礼! お兄ちゃんの馬鹿!」
私も軽口で応戦しつつ、こっそり足にキックをお見舞いする。そして、直ぐに兄からの反撃に備え、防御の姿勢をとる私。
だが、幾ら待ってもそれはやって来なかった。
(おっかしいなぁ。 何時もなら直ぐに頭をぐりぐりしてくるのに)
不審に思って兄を見上げてみると、至極楽しそうに細められた兄の目と目が合った。
(絶対なんか良くないこと考えてるよ。もう、嫌な予感しかしないんだけど)
「今度は何……?」
私は胡乱げな目付きで暫し兄を見つめる。
すると、兄が徐に正面右側にあるキッチンカウンターの上を指差した。
その指先を目で辿る私。
すると其処には、でかでかと【祝! 真由ちゃん初彼氏!】と書かれた横断幕が張り付けられているではないか。
「な、なっ、何よこれ? まさかお兄ちゃんがやったの?」
瞳にありっけの殺意を乗せて見つめると、兄は慌てて首を振った。
「違う違う、俺じゃない。母さんだ」




