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蜘蛛の意吐 ~あなたの為ならドラゴンも食い殺すの~  作者: NOMAR
~あなたの為なら神の瞳だって~
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三の一◇カダール起きてる、こっちも起きてる?

後日談です。途切れたらすいません。


 朝、眼が覚めると胸の上に重みを感じる。長い黒髪の頭が胸に乗っている。広がる長い髪が俺に絡み付くように。頬を俺の胸につけて静かに寝息を立てている。この重みが心地好い。

 ゼラが俺の胸か腹を枕にして眠るのはいつものこと。しかし、ゼラは俺より先に起きていることが多い。起きて俺が起きるまで眺めているか、そっと俺に触れてそれで俺が目を覚ましたりする。

 寝入り端にはこうしてゼラが寝ているところを見るが、寝起きのゼラを見ることは少ない。やはり昨日のことで疲れているのだろうか?

 

「ン……」


 幸せそうに微笑み眠るゼラ。楽しい夢でも見ているのだろうか。指でその褐色の頬をそっと撫でる。ゼラの体温は少し低い。

 ルブセィラ女史が調べたところ、ゼラは人より体温が少しだけ低い。だがこうして触れあっていれば、ゼラの肌は暖かい。暖かいというか、昨日の夜は、ゼラの中は熱くて溶けそうで、あ、妙にゼラの肌を感じると思えば、俺も裸で寝ているじゃないか。俺も素っ裸だ。

 どうりでいつもよりも、ポムンがムニュンしてるのを感じるわけだ。柔らかい。俺に押しつけて形を変えている。

 寝惚けた頭でゼラの褐色の双丘に手を伸ばす。大きくて、触れると幸せを感じられるそこに。

 ……まて、まてまて。ちゃんと起きろ、俺。目覚めろ。


 視線を感じて見上げる。ここはゼラ専用の特大テントの中。厚手の防水布で外の光は薄くしか入ってこない。明かりの方へと首を向けた先には覗き窓。そこからこちらを見ている二つの目がある。テントの中を覗く目と俺の目が合う。

 テントの外に立つアルケニー監視部隊か。外から覗き窓に布を下ろして、その目が見えなくなる。耳を澄ますと外から声が聞こえる。


「エクアド隊長、カダール様が目を覚ましました」

「ゼラは?」

「まだ寝ているようですね」


 アルケニー監視部隊の女騎士だ。その声は妙に楽しそうに聞こえるのは、気のせいだろうか? テントの外からエクアドの声。


「あー、ごほん。あー、聞こえるか? カダール、起きたか?」

「エクアド、少し待ってくれ」


 ゼラの肩をポンと叩いて、


「んに?」

「ゼラ、起きてくれ」


 寝惚けたゼラがパチパチと瞬きする。暗いところでは薄く輝く赤紫の瞳。いつも俺を見ている、ゼラニウムの花弁に似た色の。


「カダール、ふわぁ、おはよ」

「おはよう、ゼラ。エクアドが来てるから、起きて服を着よう。ほら、起きて」

「カダールの、起きてる、おっきい」

「男は朝はそうなるんだ。そこから手を離してちゃんと目を覚ましてくれ」


 大事なところを掴むゼラの手を離させて、俺の上から下りてもらう。寝床にしていた毛布の山から降りて、慌てて下に落ちてる服を拾って着る。む、足が少しふらつく、腰が抜けるとまではいかないが、いつもより膝に力が入らない。ゼラには赤いベビードールを頭からスポッと。エプロンと違い後ろで結ばなくてもいいから速くて簡単だ。


「いいぞ、エクアド。入ってくれ」


 テントの中にエクアドが入ってくる。


「おはよう、エクアド。……疲れているのか?」

「おはよう。こっちは徹夜で夜警していたからな。先ずは飯にしようか。ゼラ、おはよう」

「おはよ、エクアド」


 温め直した昨夜のシチューに丸パン。ゼラにはアルケニー監視部隊がこっそり持ってきた調理前の鶏肉。ゼラは血の滴る肉が好きのようで、血抜きと下処理をした肉はイマイチらしい。それでも昨日から体調は回復したのか、ムシャムシャと美味しそうに食べる。

 エクアドが疲れた目で俺を見る。なんとなくその目を見れずに視線を外して、


「……やはり、昨夜のことは知られているか」

「当然だ。このテントは防水の二重布だが、音を遮断することはできないし、夜は周りが静かになる。テントの中の声は聞こえてしまう」

「何より、監視部隊はゼラを監視するのが仕事、か」

「流石に覗くのはやめさせた。なんとか覗こうとテントに近づくルブセィラは、簀巻きにして離れたテントに転がした」

「気を遣わせたか、すまん」

「いや、いい。遅かれ早かれこうなるかと思ってはいたし。戦いの後とか、死地から生還したときに女を抱きたくなる気持ちも解るが」


 エクアドはシチューを口に運び、俺とゼラを見て。


「カダール、監視されてるのは解ってただろ?」

「しかし、それではどうすれば俺とゼラは二人きりになれる?」

「開き直ったか。エルアーリュ王子が気になったか? ゼラを手放すのは惜しいと言っていたが、あれは色恋では無いと思うぞ?」

「解ってる。が、あれはできれば手元に置いておきたい、というものではないか?」

「カダールは意外と独占欲が強いのか。お似合いだよ」


 テントの外の方に目を向ける。今もこのテントの中に聞き耳を立てているのもいるのだろう。

 ゼラを抱いたことに後悔は無い。これからのことにも覚悟は決めた。しかし、一部始終を知られているというのは、気恥ずかしい。いやまぁ、その、いろいろと段階を飛ばした気もするが、ゼラとちゃんと向き合えば俺が選ぶのはこれだし。ゼラに、進化する為にもう無茶なことはさせたく無いし。……テントの外にはどう聞こえていたのだろうか? 俺と、その、ゼラのムニャムニャは?


「エクアド、監視部隊の方は?」

「盛り上がってる。夜警の疲れも吹き飛ぶ程に」

「そんなに?」

「アルケニー監視部隊で賭けになっていたからな。カダールが手を出すのはいつか、と」

「何を人を賭けの対象にしているんだ」

「下半身蜘蛛体には手を出さないだろう。他には、ゼラの上半身は胸が凄いが、顔立ちといい言動といい、ゼラに手を出すのは少女趣味ではないか、とか。これで手を出せばカダールは真のロリコンだ、と、ゼラが完全人間体になるまで手は出さない。こっちに賭けてるのは男が多いか」


 真のロリコン。今、胸にグサッときた。ロリコン、ロリコンなのか……。


「姿形は関係無い、愛があれば種族の差も越えるはず、というのに賭けるのは女が多いか。今頃賭け金の分配に騒いでるんじゃないか?」

「エクアドはどっちに賭けた?」

「カダールの事を知ってる俺が賭けに参加したら賭けが成立しないと、外された。俺はカダールならゼラの想いに応えるだろうと思ってはいたが、予想より速かったな」

「むぐ、俺はゼラに、俺のために無茶をしてほしく無いと」

「アルケニー監視部隊には、二人をからかうな、とは言ってある。昨夜はお楽しみでしたね? なんて聞いてくるのはいないだろう。それでも、魔獣アルケニーに愛を貫いた勇者、と見られることは覚悟しておけ」

「そんな勇者呼ばわりはどうかと思うが」

「まぁ、堂々としておくんだな」


 エクアドがゼラを見る。ゼラはむぐむぐと生の鶏肉を食べている。一晩過ぎて昨日の疲れも癒えたのか、魔力が回復したのか元気そうだが。

 エクアドは丸パンを手で千切りながら話す。


「ゼラ、身体の調子はどうだ?」

「ンー、あちこち、ちょっと痛い」

「大丈夫なのか? 動けるか?」

「ウン、大丈夫」

「男の俺には、女の初めてってもんは解らんが……」

「ンー」


 ゼラは口をむぐむぐさせながら、手でお腹を撫でる。にへ、と笑って。


「むふん。まだ、カダールが入ってる感じがするの」


 言いながら幸せそうに下腹を撫でている。エクアドが俺とゼラを交互に見て。


「そうか……。ルブセィラの話は聞いてはいたが、ちゃんとできるのか。そうか……」


 俺はエクアドの顔が見れなくなって周りを見る。エルアーリュ王子から戴いた最上級のブランデーを手に取りテーブルの上に置く。


「エクアド、頼む。追究するのはその辺りで……」

「俺から部隊には言っとくが、ルブセィラが興味津々だったぞ」

「なんとかしてくれ」

「やってはみるが、あまり期待するなよ」


 エクアドがブランデーの瓶を片手に持つ。俺もエクアドも酒は好きな方だ。王族関係者しか飲めない最上級ブランデー、これでひとつ頼む、エクアド。

 ゼラが小首を傾げて聞いてくる。


「カダール、どうしたの?」

「こういうのは、男の方が恥ずかしいものかもしれない」

「カダール、恥ずかしい?」

「ゼラ、昨日の夜のことは、その、あまり外で話すようなことじゃ無いんだ」

「ウン、解った。おっぱいと同じ。外では出さない。ンー?」

「どうした? ゼラ?」

「カダールの恥ずかしいは、気持ちいい?」


 ゼラが無邪気に聞いてくる。う、む、ぐうぅ、顔を上げられなくなってきた。気持ちいい、確かにそうだったが、これほどのものとは知らなかったが、しかしこれは朝食を食べながらエクアドの前でする話では。

 エクアドがブランデーの瓶を手に取り眺めながら。


「ゼラ、ルミリア様も言ってただろう? カダールは恥ずかしがりなんだ」

「ウン」

「ゼラはカダールの恥ずかしいところは、ゼラの独り占めにして秘密にしてやってくれ。カダールの為に」

「ウン! 解った!」


 ゼラがニッコリと微笑む。エクアド、ありがとう、友よ。エクアドがアルケニー監視部隊の隊長で本当に良かった。




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