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バイトが終わってすぐに川嶋さんの携帯に電話を掛けた。
耳に当てた携帯が、いつもよりもひんやりと冷たい、ルルルと音を聞く度に心臓がドクドクと大きくうねるように動いて落ち着かない。
「もしもし」出た、間違いなく川嶋さんの少し高くて上品な声だった。
「あ、俺、亮介だけど、寝てた?」なんか変な汗が色々な所から湧き出てくる。
「まだ寝てないけど、こんな時間にどうしたの?」
「いやさ、この前の土曜日の事だけどさ」頑張れ俺!と心の中で自分を一生懸命応援する。
うん、と川嶋さんは言った後に何も言わないで黙って俺の言葉の続きを待っている。
「その、ごめん土曜日バイトって言ったけどあれ嘘なんだ」
長い沈黙が辛い。
「知ってる、ジュエリーに行ったけどいなかったから」
やっぱりバレてたんだ。
「ごめん、嘘つくつもりはなかったけど、その今は言えなくて」正直に謝るしかない。
「なんで?」少し怒ったような口調だった。
「ごめん、それは今は言えない」
「何でよ?ねえ、関谷君の隣の席の女の子あの子に関係あること?」
「へ?」隣の女の子と言えば、国神さん?ちょっと待てなんで今、国神さんの話が出てくるんだ?
「国神さんだっけ?あの子と最近すっごい仲良いでしょう?休憩中に話してるし、あの子は私に話せない事知ってるの?」怒ったようにして、ものすごい早口で言う。
「えっ?と……」なんて答えればいいのか分からず黙り込んでしまった。
「やっぱり、知ってるんでしょ?もしかして二人付き合ってるの?」
「まさか、付き合うどころか、本当に席が隣なだけで……」それが真実でこれ以上に説明しろと言われても困る。
「ほんとに?」
「あぁ」
「分かった、ごめんね変な事言って」
「いや、俺の方こそごめん。嘘ついたりして、でも時が来たら必ず話すから」
「分かった、待ってるよ」
すまない。今言えなくて。
電話を切った後、俺はもう一度強く誓った。免許を早く取るって。マジ、今まで以上に頑張らないとな。
国神さんの事とかなんで聞いてきたんだろ?もしかして、ヤキモチ?
いや、まさかなー。っていうか、俺と川嶋さんの仲こそどうなんだよ?
川嶋さんってさ、実際俺の事どう思ってんだろ?
俺としては、顔が見れるだけで嬉しいし話せたらもっと嬉しいし、色々と想像してしまってはあれを……(まぁこの先は言えないんだが、想像しちゃいやん笑ただブルーレイ観るだけだよ?変な想像をしなかったかい?笑)
でも気持ちを伝えたりとかはしてないんだよな。




