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そしてこの二軒にはなんとなく近寄りがたいオーラが漂っているような気がして、3階建てのビルに入り102の柳城さんの家のポストに一瞬で入れるなり、素早くその場から離れ、坂道を思いっきり走って下る。
家に入り、すぐに玄関の鍵を締める。
「入れてきた」そう言って言うと、オカンはウンと頷いて、味噌汁と卵焼きとご飯を茶わんによそおってくれて、しっかりとそれを味わって食べた。
朝から走った事で、俺の脳はスッキリと目覚めることが出来たらしい。
中C町##1の前の道路を通り抜けて学校に行く途中に、物凄い身体が大きくていかにも食う趣味です、というような夫婦そろって真ん丸な40代位の夫婦が、黄色い物を持って、右往左往していた。
いや、朝からあんなに目立つ色の物持って、夫婦揃ってあれだけ陣取っていれば、見たくなくても目が吸い寄せられてしまうじゃーないか。
黄色いハンカチを入れられ戸惑っているところか。柳城さん会社行く前に入れたのか?横目でチラリと見つつも、何か声を掛けるでもなく、そのまま学校に向かった。
「ねぇ先週土曜日なにしてたの?」休憩中に俺の席の前まで聞いて俺にそう聞いてきた。
「土曜日?バイトだけど、なんで?」
「ほんとにい?」俺の顔を覗きこむようにして聞いてくる。
「うんバイトだった」
「そうなんだ~」それだけ言うと気が済んだみたいで、自分の教室へと戻って行った。
「ねぇ、あの子川嶋さんだっけ、よく来るよね、関谷君の所に。付き合ってるの?」
「へ?いや、別に付き合ってはいないけど」
こういう質問は、本当に不得意な分野だ。毎回思うけどこういう時に、うまく答えることが出来るように、マニュアルが欲しい。
(あいつは彼女か?と聞かれれば、いや彼女じゃなくてガールのフレンドです、というようなさー結構切実に)
「そうなんだ土曜日バイトってあれって嘘でしょ?」
「え?なんで?」
「だって、関谷君分かり易すぎ。顔に書いてあるよ」そう言って白くて細長い指を自分の顔に持っていき、ここね、とそう付け足した。
「マジで?」国神さんの机の上の鏡を拝借して、自分の顔を覗き込む。あー、やっぱこの太い眉毛が語っている感じか?眉毛の毛並みを人差し指でちょんちょんと整える。
「関谷君ってさ、おもしろいねー気に入ったわー」
何故そんな事を言われるのか全く分からないのだが、国神さんは手を大きく叩きながら笑った。
国神さんって美人で、ツーンとした感じだけど、笑うとこんな感じになるんだな。




