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「なんでそれを・・・・・・?」
「千絵から聞いたのよ、で、どうなの?」俺は直ぐに立ち上がり走った。
地図ばかりに気がいってしまい、黄色いハンカチをどこかの家に入れると言う事をすっかり忘れてしまっていたのだ。
いかんな、疲れすぎてるのかな・・・・・・。
C町の夢路さんのお宅のポストに黄色いハンカチを入れ、逃げるようにして走る。背後から視線を感じ振り返ると、ウォーキングしている60代後半くらいだろうか、夫婦で手を繋いだりしてとても仲が良さそうに見える。
そんな事を考えることが出来るくらいの心の余裕を持ちつつ、家の玄関を開けしっかりと鍵を締める。窓から誰か来ていないか確認するが、夢路さんが追いかけてくるような様子はない。
まだ始まったばかりで、そんなに警戒していないのだろうか。そんな事をふと思いつつも、先ほどの夕飯の続きを食べる。
って、冷めてるし……。
「もう亮介ったら食事の途中でどっか行っちゃって、冷たいでしょう?」
「……まぁ」
「もう一度温め直すから少し待っていなさい」
オカンはそういうとレンジで温め始めた。俺はリモコンを手に持ちバラエティー番組にチャンネルを合わせる。
「で、それでどうなの?どこの家に入れたの?」レンジの前に立ったままオカンがいった。
「夢路さんっていう人の家」
「そうなの。なんでうちの家もメンバーとして入れられてるのよって千絵が驚いていたけど、お母さんはこう思うのよ。きっとこの家が新築だからじゃないかしらって」
「は?何それ?」
「ほら、だってC町の##って言ったら、お金持ちそうな家が多いじゃない?で、きっとお母さん達の住む家もC町の家だろうって勘違いしちゃったんじゃないかしら?」そういってオカンは口の前に手を持っていきホホホと笑った。
なんだそれ?と思いながら「はー?でもこの辺だって新しい家あんじゃん」と言ったら
「でも、この家が一番きれいでしょう?」と返された。
オカンの話を半分流しながら聞くのだが、それにしたっておめでたい人というかさ。
仮にそうだとして、こんな気味の悪いゲームに再び参加させられることになるなんてめでたい事ではないと俺は思うのだが!?むしろ、迷惑な話だろ!?
家を褒めらたとでも思っているオカンは、いいよな幸せでさ。
まぁオンナゴコロというものが分からん俺が言うのもなんだけどさ。
温め直してもらったシチューを一口食べて、シチューは温かいからこそうまいんだと改めて感じた。
「食べたら早くお風呂に入って寝なさいよ?」オカンはそう言って読みかけの本を手に取り読み始めた。




