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「亮介、悪いがここで待っていなさい、15分後には戻ってくるから」
そして、オトンは上着を羽織り、外へと出て行った。
ん?なんだ、なにごとだ?どこに行くんだ?俺を待たせて。
オトンのやっている事の意味がさっぱり分からず、書斎にある本棚の前にボケッと座り込んだ。
しばらくすると、「お待たせ」と言いながらオトンが戻ってきた。
「どこに行ってたんだよ~」俺が聞くとオトンは「これを使いなさい」と分厚い封筒を俺に手渡した。
「なにこれ?」そう聞きながら中を覗くと……、万札の束が……。
「%#$#!%&%#$#$」と言葉にならない声をあげてしまった。
「これはお父さんがお母さんと結婚する前に貯金していたお金で株をやって、もうけた金だ。お前がバイトで稼いだことにして自由に使いなさい」
「カ、カブ?いくらなんでもこんな大金を現金でくれなくても……」思いがけない大きな出来事に冷や汗が出てくる。
「いいか、亮介、お前は男だしこの先結婚しても働き続けなくてはいけない、
時代が変わって男が家の中にいるのが当たり前って時がいつか来るかもしれんが、残念ながらお前が結婚する頃にはまだそんな風にはなってないだろう、
だからお前は会社に勤め出したら働き続けねばならん。
だがな、自分の目で見て耳で感じた事は全てお前の経験となり生きていくうえで宝物となるだろう。お前は男だ。
色々な経験をして欲しいとお父さんはそう思っているんだ。いいか、法に触れることはしたらいかんが、どんどん色々な事をやってみなさい、今しか出来ない事をするんだよ」
「うん……オトン、ありがとう……本当に」
その封筒の重みを感じながら自分の部屋に戻り、部屋の隅っこで、縮こまりながら、封筒の中の万札を数えた。
「52,54.61、71・・・・・・」見たことも持ったこともない大金を目の前に俺の冷や汗は止まらない。
それにしても、こんな大金をここに置いておくのはちょっと気が引ける。
その大金をショルダーバッグに入れて、胸の前の方で持ちギュッと握りしめたまま――誰が見てもいかにも大切な物持ってますと言うように――ATMに向かった。
無事に貯金することが出来て、安心する俺。そして、通帳を眺める。
おぉ!
俺の貯金がついに100万円を越している!等とニヤついてしまう。
免許どころか、こんなにあればバイクフォルツァだって買える。頭の中にはくっきりと運転する俺の姿と川嶋さんの姿が浮かぶ。




