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ズーマーは安いけど、せっかく買うんならもっと気に入ったものがいいよな。
二輪だと後ろに、川嶋さん乗せれるんだけど、原付は乗せらんねーしな。
いや、でも今すぐ欲しいしさ、JOGとか無難だよな。
うーん、予算は15万くらいか?
「ねぇ、せきたに君?何見てるの」
「セキヤですけど…・・・?」右隣の席の女の子に自分の正しい読み方を教える。
「あーごめん、セキヤくん」
「いや、よく間違われるから」
「そーなんだ、で、関谷君もしかして、さっきからバイク調べてる?」
「え?なんでわかったの?」
「やっぱりー?いや、私もバイクの免許欲しいなって思ってるからさ、さっきホンダのJOG見てなかった?」
「あ、そう、当たり」
「でしょー?免許持ってるんだ?」
「いや、免許はこれから取りに行くつもり」
「えー?どっち二輪?でもうちらの年だと大型二輪はとれないから普通二輪とかだよねー」
へぇ、女の子なのによくそんなに詳しく知っているな、と感心する。
「いや、原付をとりあえず取ろうかと考え中、えーっと・・・・・・」そう言って名前を確認する。
「あ、私、国神匡子ね」
「国神さんは、もしかして二輪取るの?」
「うん、欲しいなって思ってる。原付じゃなくて二輪がいいなーって思ってる」
少し派手そうな感じはあるけど、別に男っぽくないし、最近の女子高生って感じなだけに、その言葉がすごく意外に聞こえた。
「そうなんだ、乗りたい車種とかあるんだ?」
「絶対にフォルツァがいい」
「ホンダの?」
「そう、あれマジ座り心地いいし、女の私が乗ったら超カッコよくない?とか思ってさー」
「大音量で音楽流せるところとかも、いいよな」
「そうそう、マジでめっちゃ早く乗りたいわぁ」
国神さんは、そう言いながら椅子の前方部分を床から離し、全身を後ろに仰け反るようにした。
パ、パパパパンツが見えそうだ。
そこに目が行きそうになるのを必死に逸らしながら、携帯の画面を見つめる。




