12
「亮介?今どこ?この前渡したお守り代わりの袋返してくれない、今すぐ必要なの帰ってきてくれる?」
「分かった、帰ったら返すよ」
「帰ったらって、いますぐ帰るよね?その中にどうしても大切な物が入っているのよ。今すぐに必要なの。いい?あと15分以内には帰ってきてよ?じゃないと、あんたの命は……」
「はいっ」
そう言って、電話を切り、ポケットから自転車のカギを取り出す。
「川嶋さん、ワリィ。どうしても帰らなきゃならない急用ができた。この埋め合わせは必ずするから。今日の所は本当悪いんだけどさ、これで」
俺は腕時計を見ながら、エスカレーターを階段の様にして下りる。人の真横をすみません、とかき分けるようにして進みながら。
自転車の小さな鍵穴に慌てれば慌てるほど、鍵が差さらねー。チクショー。15分以内に帰らないと、どんな目に合されるかわかんねー、っつうのによ。
自転車をものすごいスピードで漕いで、家に着き、姉貴に、これ、と言って袋を渡す。ハァハァ――。
「あ、亮介ごめーん。電話したんだけど出ないんだもん。袋の中にネックレス入ってると思ってたんだけど、よく見たらジュエリーボックスに入っていたのよー。ごめんね、亮介」
あ
……な、なななななんですと?
俺は川嶋さんとのスイートラブを中断してまで帰って来たと言うのに。それも、ネックレスとか……。俺は泣きそうになったね。
肩の力が一気に抜けた俺は、倒れ込むようにしてベッドに横になる。川嶋さん怒っているかな。
姉貴みたいに性格悪くないから、怒らないでいてくれるよな?
川嶋さん、最近また可愛くなったよな。そして、なんだか艶っぽい。川嶋さん、そう言えば俺に何かを言おうとしていたけど、なんだったんだろう。もしかして、愛の告白だったりとかしちゃって?
川嶋さんとの事を考えるといつも甘酸っぱい。
あぁ、これで、全て終わった。平凡な日々が俺を待っている。
自転車の鍵をしていないことを思い出し、外に出る。もうすぐそこまで春が来ている。来年も川嶋さんと同じクラスになれればいいのだが。
そうして、ポストを開けると黄色いハンカチと白い手紙が入っていた。
――1完――
最初から最後までご覧下さった皆様、本当に心より御礼申しげます。
ありがとうございました。
あなたにとって沢山の幸せが山のように訪れますように。
一旦完結いたしますが、日数を空けた後に続きます。
この後ろに続きます。




