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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
第三章 終業
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8

とにもかくにも、川嶋さんが協力してくれることが、嬉しすぎるんだが。

 俺たち二人は喫茶店を出て、ゲームショップに向かった。

 川嶋さんが、どんなゲームが好きなのか興味があったが、マジオ系は全てやりこなしたそうだ。

 最近発売したばかりの、マジナクラフトを今やり始めているらしい。携帯よりも画面が大きいし、バージョンアップするのが速いとか言っているのを見て、想像以上にゲーマーだという事が判った。

 もしかすると、俺よりもゲームをする時間が長いのではなかろうか。

 

 その後、川嶋さんは用事があるとかで、帰ってしまった。一人残された俺は、なぜか寂しくて仕方がなかった。

  もしかしたら、夕飯も一緒に食えるかも、なんていう考えは甘かったようだ。

 

 月曜日、学校に着くなり川嶋さんは、バタバタとこちらに走ってきて、

「おじさんに聞いてみたけど、おじさんの家にも届いてるらしい。それで、視線を感じることが多いらしい、全員怪しく思えて犯人が誰と言うことまで全く分からないってさー。でも関谷君の事は話していないから、私が関谷君に教えていることは秘密ね。二人だけの秘密」と言った。


 二人だけの秘密?二人だけの……相変わらず俺の心のセンサーは川嶋さんの妙な一言に反応する。


 「監視している人とか、カメラはついてないかとか、もし小さなことでも分かれば教えてくれないかな?協力すればきっと解決の糸口が見つかるとおもうから」

「当たり前だよ関谷君の為だもん」


 関谷君の為だもん、か。

 なんて、キュートな事を川嶋さんは口にしてくれるんだろうか。嬉しくて、胸が熱くなる。

 クマ公の授業を聞きながら、色々と考える。

 

 それにしても、川嶋さんの親戚も疑心暗鬼になっているのか、同じ立場に立たされれば、誰だってきっとそうなるだろう、俺の家だってそうなんだから。


 その夜、川嶋さんの親せきの家は、俺の部屋から見えないが、その方向を見ながら、こんなに近くに繋がりがあるなんて、やっぱ運命の相手じゃね?なんて甘い夢を見た。もちろん鼻の下を伸ばしながら。


2月。そろそろマラソン大会の時期だった。走り始める前は寒くて震えるほどなのに、走り終えた後は、冷たいものを身体が欲する。

 体育の授業のあとは、つい自動販売機でコーラを買ってしまう。


 この頃、川嶋さんの様子がおかしい。

 あれ以来、さっぱり赤いハンカチについて話してくれることはない。

 それどころか、目が合うことすら避けているかのようで、川嶋さんは何故か目を逸らすのだった。


 何故だ?俺は何か悪い事をしてしまったのだろうか?川嶋さんの心が全く読めない。何か嫌なところがあるなら直接言って欲しい。

 そう思って、川嶋さんが一人でいる所に近づこうとするも、川嶋さんはそれに気がついてか友達の所に行ってしまう。

 完全に拒否られているのだ。


 メールをつかうことも考えたが、何故だか川嶋さんの事になると、かなりの臆病者になってしまう。

 もしメールで拒否されたり、嫌いになったという文字を見てしまったら。そう思うと怖くて、結局、何も行動できず見守っている事しかできなかった。


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