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とにもかくにも、川嶋さんが協力してくれることが、嬉しすぎるんだが。
俺たち二人は喫茶店を出て、ゲームショップに向かった。
川嶋さんが、どんなゲームが好きなのか興味があったが、マジオ系は全てやりこなしたそうだ。
最近発売したばかりの、マジナクラフトを今やり始めているらしい。携帯よりも画面が大きいし、バージョンアップするのが速いとか言っているのを見て、想像以上にゲーマーだという事が判った。
もしかすると、俺よりもゲームをする時間が長いのではなかろうか。
その後、川嶋さんは用事があるとかで、帰ってしまった。一人残された俺は、なぜか寂しくて仕方がなかった。
もしかしたら、夕飯も一緒に食えるかも、なんていう考えは甘かったようだ。
月曜日、学校に着くなり川嶋さんは、バタバタとこちらに走ってきて、
「おじさんに聞いてみたけど、おじさんの家にも届いてるらしい。それで、視線を感じることが多いらしい、全員怪しく思えて犯人が誰と言うことまで全く分からないってさー。でも関谷君の事は話していないから、私が関谷君に教えていることは秘密ね。二人だけの秘密」と言った。
二人だけの秘密?二人だけの……相変わらず俺の心のセンサーは川嶋さんの妙な一言に反応する。
「監視している人とか、カメラはついてないかとか、もし小さなことでも分かれば教えてくれないかな?協力すればきっと解決の糸口が見つかるとおもうから」
「当たり前だよ関谷君の為だもん」
関谷君の為だもん、か。
なんて、キュートな事を川嶋さんは口にしてくれるんだろうか。嬉しくて、胸が熱くなる。
クマ公の授業を聞きながら、色々と考える。
それにしても、川嶋さんの親戚も疑心暗鬼になっているのか、同じ立場に立たされれば、誰だってきっとそうなるだろう、俺の家だってそうなんだから。
その夜、川嶋さんの親せきの家は、俺の部屋から見えないが、その方向を見ながら、こんなに近くに繋がりがあるなんて、やっぱ運命の相手じゃね?なんて甘い夢を見た。もちろん鼻の下を伸ばしながら。
2月。そろそろマラソン大会の時期だった。走り始める前は寒くて震えるほどなのに、走り終えた後は、冷たいものを身体が欲する。
体育の授業のあとは、つい自動販売機でコーラを買ってしまう。
この頃、川嶋さんの様子がおかしい。
あれ以来、さっぱり赤いハンカチについて話してくれることはない。
それどころか、目が合うことすら避けているかのようで、川嶋さんは何故か目を逸らすのだった。
何故だ?俺は何か悪い事をしてしまったのだろうか?川嶋さんの心が全く読めない。何か嫌なところがあるなら直接言って欲しい。
そう思って、川嶋さんが一人でいる所に近づこうとするも、川嶋さんはそれに気がついてか友達の所に行ってしまう。
完全に拒否られているのだ。
メールをつかうことも考えたが、何故だか川嶋さんの事になると、かなりの臆病者になってしまう。
もしメールで拒否されたり、嫌いになったという文字を見てしまったら。そう思うと怖くて、結局、何も行動できず見守っている事しかできなかった。




