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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
第三章 終業
72/149

6

金曜日。

「大丈夫?関谷君、最近疲れてない?」川嶋さんが俺を気遣う。

「まぁ、ちょっと色々あって」

「色々ってなに?」

「まぁ、大丈夫だからー」

 川嶋さんに、ハンカチの事を言う気には無論なれない。川嶋さんでなくても他の誰かに相談するのも疲れるし、相談しても何も解決しないからということ。

 それから、余計な心配をかけたくないということ。川嶋さんには絶対に危険な目には合わせられないからな。

 

まぁ、最後の方はかっこよくいってみるわけだが。

 そしたらさ、もしかしたら1000分の1、いや1万分の一の可愛い子ちゃんが、亮介君カッコイイってなるかもしれないだろ?


 土曜日。

 久しぶりにバイトが休み。ゲーム三昧の日と、決め込む。

 今日もポストにハンカチが入っている。

 それを関井さんのお宅にバサッと入れ、そしていったん家に帰り、自転車に跨りゲームショップへと向かう。

 雪が降っていないだけマシだが、それでも寒さが厳しく、信号に差しかかった所で鞄の中から手袋を出し、左手からはめる。


「あ~やっぱり関谷君だ」その声に振り向くと、私服姿の川嶋さんが手を振っている。

「あれ、どうして?」想像もしていなかった出来事に驚く。驚くというより、心が弾む感じだ。

 よくばったり会うよな?これってもしかして赤い糸で結ばれていたりしてな。


「さっき、似ている人が見えたからそうかな?と思って追いかけたけどやっぱりそうだ。どこ行くの?」川嶋さんの鼻が寒さで赤くなっている。かわええ。


「暇だからゲームでも買いに行こうかと思って」今回はこの前のようにならないように、きちんと正直に行先を告げる。


「えーアルバイトかと思った。今日は休みなんだ?」

「そう、先週は連続出勤したしさー」

「マジでー。じゃあ良かったら一緒にあそばない?」すっごいテンション高めで川嶋さんは行ってくる。

 一緒に遊ばない?だってさー。

「もちろん」俺だって負けずにノリノリでOKサインを出す。


 俺と川嶋さん、エンジン全開!いざ、出陣。


 ゲームショップに行く前に、近くの喫茶店に入る。

 店内の暖かさにホッとする。

 俺はコーヒーとアップルパイを。川嶋さんはシナモンロールとローズヒップティーを注文する。


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