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「だって、おかしくない?なんで田中さんが自殺したこと、とか知ってんの?あの人なら、監視できそうじゃん、これまでのお母さんとの事聞いててもさー、ああいうタイプは別の意味でも執念深いって感じで怖いしさ」
「……」
「そうよ、絶対あの人しかいないわ。今、自分で言葉にしてみて、やっぱりあの人が怪しい。ねぇ、だとしたら、どうやってあの人みんなの事を監視してんのかな?って、亮介聞いてんの?」
そういった次の瞬間、テレビ画面の電源がプチッと切れた。姉貴の顔を見る。
「なにするんだよ」
「もう、どう思うかって聞いているのよ?ゲームなんかしていないで真剣に答えなさいよ」
「勝手に切ることないじゃ……」そこまで言い返したが、姉貴の目は鬼のように吊り上っていて、頭の上からは角が二本生えているように見えてきて、はい、と静かに返事をする。
やはり、強く出れない自分。実に情けねー。
「でさ、青木さん、24時間、色々なところ観察してるよね?」
「いや、いくらなんでも24時間っていうのは無理なんじゃね?カメラとかあれば別にして」
「……そうよ、カメラよ。カメラがきっとどこかにあるはずよ。探すわよ」そういうと、強引に俺の左袖を結構な力で引っ張る。
カメラねぇ。うーん、カメラがあってポストが見える場所?そういう目で他の家を見てみるが、どうだろう、そんなお宅あっただろうか。
やはり、防犯カメラを設置しているようなお宅は見当たらない。
もちろん、うちにもカメラなんてものはない。
しかし、青木さんの家はA団地とB団地の調度境目に建ててあり、監視をしようと思えば出来ない程でもないかもしれないと思ったが、死角になる家も数件あり、青木さん一人での監視は無理だと言う結論に達した。
1月にもなると、朝起きると雪が数センチうっすらと積もっている日もあって、そんな日はどこにも出かけたくはない。
子供の頃はたまに降り積もる雪が嬉しくて仕方がなかったというのに。
俺はいつの間に、子供じゃなくなってしまったのだろう。
ま、まだまだ大人とも言えないけどな。
ポストを覗くと、赤いハンカチが今日は二枚届いている。
この頃は毎日のようにハンカチが入っていて、この為にわざわざ外に出るのが何とも憂鬱な気分にさせられる。
ルールが変わったという白い手紙は未だにまだ届かない。一枚だけであったハンカチの数が増えてしまったことに関する手紙が、一向に届かないところを見ると、もしかすると、真犯人は、この忙しくなってしまう状況を、楽しんでいるのではないだろうか、という気持ちにさせられムッとなる。
実際、このハンカチの枚数が増えた事により、一日に3回もハンカチが届くような日もある。苛立ちでしかないのだが、こんなものどうにでもなれ、と放っておくわけにもいかず、しっかりと任務を遂行する。
大雨が降っている朝。
A団地の大阪さんと丸中さんが亡くなってしまった、という事を知らされる。
『大阪家と丸中家にに赤いハンカチを入れてあったが26日が経過したた為、タヒにました_。さぁがんばりましょう※毎日ポストをしらべましょう』
赤いハンカチ4枚と白い手紙が入れてあったのだ。




