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「え?なにコレ?なに、え?プレゼント?」
「うん、クリスマスだから」
「えー、嬉しい。開けてもいい?」
なんだか、この感じ。非常にドキドキする。
反応が楽しみなような、でも、なんだか怖い感じがするんだが。
「わー何?ネックレス?しかもローズのネックレス。やだ~超可愛いんだけど。付けてもいい?」
大喜びしてくれる姿を見て、ホッと胸を撫で下ろす。
嬉しそうに喜んでくれる姿を見て、プレゼントを用意して本当に良かった。
第三章 終業
「殺人犯はこの世界から消えなさい。この地球の空気を汚すのはやめなさい」多田さんが大音量のスピーカーで、自分の声を録音したテープを流している。
俺たちのストレスも最大限にまで達しようとしていた。
オカンは昼間に一人で家にいるのも恐ろしいらしく、最近は食欲も減り、少し細くなった気がする。
いや、多分、人の外見に疎い俺がそうやって思うんだから、間違いないだろう。
多田さんが、言葉だけで嫌がらせをしてくるだけ、まだマシなのだ、と思うしかなかった。殺人とかそういう事にならないだけマシだった。そう思うと少しは気持ちが軽くなる気がした。
木曜日。
外にはパトカーが止まっており、何やら騒がしい。多田さんの家の方だ。その後も何やら報道陣がいる様子だった。先ほどからインターホンが鳴り響くのはそのせいなのか?
階下から「大変よ~」オカンの大きな声がしたので、怪我でもしたのかと思い慌てて階段を下りる。
オカンは閉め切ったカーテンの隙間から外を覗き込むようにして、確認しながらテレビを見ている。
「そこの家の多田双士、とうとう逮捕されたわよ。ほら、これ見てよ」
オカンがせんべいを持った手で、テレビを差したその先を見ると、そこには見慣れた景色と薄い髪の毛の多田さんがモザイクなしで映っていて、迷惑防止条例違反の容疑の文字が画面右上に大きく映し出されている。この景色は明らかにこの辺りであり、液晶画面に映るその人物は多田さんで間違いない。
姉貴は自分の家が映った!とか言って、別の意味ではしゃいでいる。 映し出されたテレビと窓から外の風景を比較する。
自分が知っている人、場所がリルタイムで放送されていることが、不思議で仕方ないのだが。
多田さんは、ややうつむき加減で警察に連れられている映像、同じ物が何度も繰り返されている。そして、見ていると近所の人の証言として、おばさんが顔より下だけの画像で喋っている。
この家は……。それに、この声は。
明らかに誰がどう見ても、隣の古川さんの姿だった。
オカンも姉貴もそれを見て何故か笑っている。




