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だよな。そうだよな。ここで逃げたら男が廃るよな。
よしっ行け!俺は覚悟を決めて、ネックレスが並べられているところまで行く。
女性店員が近づいくる。
「いらっしゃいませ、なにかお探しですか?」キタキタキタ―ッ。
まだ全然見れていないのに声を掛けられた俺は、逃げ腰になる。
「いや、その……、プレゼントを……。おすすめとかって、ありますか?」
「どんな方ですか?」
「同い年で、名前は川嶋かなさんで……」
「えぇ、そうなんですね。雰囲気とか教えて頂けますか?」店員さんはそう言いながらニッコリと笑っている。
ハッ、しまった。
オイオイオイ、名前なんか教えてどうするんだよ、店員さんに名前話したところで全く意味ねーじゃないか。俺は恥ずかしさのあまり、逃げてしまいたくなる。こういう所なんて、今まで一度も入ったことねーんだから仕方ねーよな。
「雰囲気……そうですね、明るくて顔だちが整っていて、タラコ唇なんですけど赤色とか似合いそうな感じです」うっわ。俺完全にテンパってるわ。
「そうなんですね、予算は大体どのくらいでしょうか?」
「二万位と思っていますが……。ありますかね?」
「それでしたら、こちらなんていかがでしょう?」そう言って店員さんが薔薇のモチーフのネックレスを持ってきた。
おぉ、割と可愛い、多分。そんな気がする。
「いいですね」
「他にも、こういったハート形のものもあって、こちらはペアの物になっていて、お揃いでつけれるようになっていて、こうやって二つをくっつけると♡になるんです」
「おぉそれもいいですね、で値段は?」
「えぇっと、薔薇の方が17800円でハートの方が16900円です」
おぉ、予算内だ。しかし、どちらがいいんだ?
「すみません、女の人から見てどちらがいいですかね?」考えたところで答えが出るわけじゃないんだから聞くしかない。
「そうですねぇ、うーん。私、個人的には薔薇の方が好きですが、こちらのハート型も人気ですよ。クリスマスプレゼントで二つ一緒に買って行かれる方も多いです。一緒につけれるというのがいいですよね」
そうかー、川嶋さんと一緒につけるんだ?そんで二人だけの秘密みたいな?幸せだな俺。笑
でも待てよ?そういうのって付き合ってる人がやるもんだよな?ん?俺と川嶋さん付き合ってねーじゃねーかよ。
てことは、お揃いも何もないどころか、ハート形のペンダントなんか買って、え?なにか勘違いしてない?とかって勘違い男って言われた時にはどうするんだよ?
「あ、薔薇の方にします。それください」決まりだな。
「かしこまりました、すぐにお包み致しますので少々お時間いただけますか?」
「はい」




