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翌日、学校が終わり家には帰らず、そのままバスに乗り込み、街へと出かけた。どの店に入ったらいいのかも分からないが、女物の店なんか俺には到底入れそうになかった。
頑張れ俺!ひるむな俺!そうやって自分に言い聞かせるも、店の前まで行っては女性店員さんが俺の方をみていたら、携帯電話を取り出し、あたかも誰かからかかってきたように装い、通り過ぎる……。
しかも、この技、10回以上は、繰り返してやっているという。
仕方がないので、男物の店に入り、マネキン一式と女性の店員さんに勧められた服を一枚買う。こういう店の女性定員なら何故か、平気なのだが。
「こんなに買われてデートとかですか?」店員さんは袋に俺が買ったものを詰めながら聞いてくる。結構ハッキリと際どい質問をするんだな。
もし俺が女子とデートする予定なんかなかったら、撃沈ものだぞ?
「まぁ、そうです」
「もうすぐクリスマスですもんね」クリスマス?そうだ、俺、今がチャンスだ!聞くんだ。
「あの、女の人ってクリスマス何が欲しいですか?」顔から火が出そうになりながらやっとの思いで聞いてみる。
「そうですね~指輪とかですかね。でも指輪ってサイズがわからなかったりするので、プレゼントとかされるのであれば、ネックレスの方がいいかもしれないですね~」やっぱ指輪か。ネックレスっていうのがあったか、あれもアクセサリーだしな。
「ネックレスですか……。因みに、どこのお店が良いとかありますか?」
「そうですねぇ、まぁここの一階にも結構可愛くて、お値段もお手頃なのがありますよ。私もそこでよく買いますし。ほんとに、そんな高くないので買いやすいのも魅力ですよ~フフ」
なんだか色々と見透かされているような感覚にはなったが、丁寧にお礼を言って一階まで下りる。
エレベーターで前のカップルが手を繋ぎながらイチャイチャしているのが目に余る。
おい、俺!いいではないか~。目の前のカップルの姿は、近い未来のお前の姿かもしれないじゃーないか、そんな声がどこかから聞こえる気がして俺は妄想してニヤつく。
俺も早く手を繋いじゃったりとかしちゃったいよな~、クリスマスの日にはムフフ。
一階について靴売り場を通り過ぎて、アクセサリー売り場に向かう。しかし、どんなものがあるのか見ようものなら、あの白い手袋つけた女の人がずっと付いてきそうで、イマイチ近づく勇気がない。
値段が全く見当もつかない故の恐ろしさもある。あの店員さんのお手軽価格と俺のお手頃価格が一致するとは限らない。
帰ろうか……?
しばらくの間、先ほどと同じように、店員さんの目につかない程度に行ったり来たりを繰り返した。
そんなんじゃ駄目だ、おい俺!勇気を出せ!金ならあるじゃないか、どうしても気に入らなかったり高すぎたら帰ればいいだけじゃないか!
いいか、これは俺に与えられた試練なんだ!これを乗り越えることが出来れば、輝かしいクリスマスが俺たちを待っているんだぞ?




