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俺だってそれがいけないことだろ~なって薄々は勘付いてはいたんだよ?
「ハッハッハー」豪快に笑ってゴマ化してみる。
「ハハじゃないでしょう、いい?電気代なんて無駄をしたらキリがないどころか、無駄だと気が付いてその分節約したお金で一体いくら必要な物が買えると思ってるの?」始まったー、オカンのキーキーが(怒るときは声が高くなるのでキーキーと呼んでいる)。
全部俺のせいなのかよ、電気代が高くなったのはよー。
「そんなん、俺のせいだけとは限らんだろ?姉ちゃんだって色々使ってんじゃん、お風呂使いたい放題だしさ」
その時、勢いよく居間のドアが開いた。げっ!よりによって姉貴が来た。
ねずみの前に暴れん坊猫2匹といったところか。
「失礼ねぇ、千絵は確かにお風呂沢山入っているけど、その分お母さんにお金支払っていますー。いいわよね、あんたはいつも能天気で」
はぁー?なんだと――?俺はグッと両手を力強く握りしめた。
「そうよ、お姉ちゃんにはバイト代から毎月少しだけでもと言ってね、自発的に入れてくれているのよ」
「なんだよそれ、初めて聞くんだが」姉貴のやつ、オカンの機嫌取るのうまいからな。
「そうよ、先月からしっかり入れてるんだから」
……。って、オイ。先月からってまだ始めたばかりじゃねーかよ。そこまで威張れることなのかよ?
それにいつまで続くのか分かったもんじゃねーだろ。ダイエット中にケーキ3個15分以内に続けて食べるような女だぞ?
「亮介、その目は一体なんなの?」お!しまった、ついつい感情が顔に漏れた。
「いい?亮介にも払いなさい、とは言わないんだから、点けっぱなしで寝る事だけはやめてちょうだい」
「へーい」
「へーいじゃないでしょーあんたも毎月支払いなさいよ5千円位は」
は?5千円?高すぎだろ。オイ、そんなん知るかよ?まだ17歳だぞ?姉貴は好きでそうしてるんだろ?頼むから巻き込まないでくれよ~。
と言うか、姉貴毎月5千円も払っているのかよ。
「そうね、亮介もそれだけ支払ってくれたらお母さん時々しか言わないでいるわ」うわー、最悪な展開キターーー。
その後、二人のまるで恐喝的な雰囲気に耐え切れず支払請求に応じることとなってしまった。その額一カ月五千円。なんで俺はこの家族の中で立場が弱いのだ?一番下だからか?
いや、それだけではない気がする事には、俺だって気が付いているさ。その後、真面目に毎月5千円ほど家に入れ続けたのだが、随分後になって姉貴が入れていた額は500円とワンコイン程度だったことに加え2回だけの支払だったらしい。___クッソッ、やられた___女と言うのは、したたかな生き物だ。
「そういえば、あそこの家の人引っ越したじゃない?」オカンが急に思い出したように、洗い物をして濡れた手をエプロンで拭いながら言う。
「あそこの空き家の人ねー」姉貴がポテチをボリボリと頬張りながら答える。
少しくれ、と言ったが言い方が悪かったせいか姉貴がくれたのは、たった一枚だけだった。それも小さな欠片を。
俺は、声を大にして叫びたい___姉ちゃんのケチンボー___
「そうそう、あの人戻ってくるんだって」そんな俺の気持ちはオカンは知らない。
「え?なんで?引っ越したのに、なんでまた戻ってくんの?引っ越しっていいながら、お父さんみたいに長期の出張だったりとか?」
「そうじゃなくて、なんでも引っ越し先の家が火災で燃えたらしいわよ?」
「はー?なにそれ、めっちゃ災難じゃん」
「うん、そうでしょう。可哀想よね」
「でもさーそうするんだろーね、ローンだけ残っちゃうじゃん」
「それがね、債務不履行とかで住む前には家がなくなってしまったとかでお金は払わなくて済むらしいわよ」
「えーそうなの?」姉貴は、お茶を飲みながら、お菓子をボリボリ食べ続け、お菓子がなくなってしまったのか袋の中を目で確認した後、更に次のお菓子の袋を開け始めた。
「うん、そうなんだって、損害賠償とかは知らないわよ?でも住む前にそうなったみたいとかなんとかって、まあ噂だけどね」




