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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
第二章 進展
46/149

13

今日のバイトは休みなのに俺が来ている事に気が付いた店長が声をかけてきた。

「関谷?今日バイト入ってないだろ、間違えたか?どうした」

「店長、今日は客としてきたんです。店長これくらいのサイズのプラスチックでできたものってありましたっけ……?」

「ん?何に使うんだよ」

「ちょっと家の門の近くに飾りをつけたくて、サイズはこれなんですけど」

「うーん、鉄になら難しいと思うよ君がやるなら」

「そうですか……」

「でもまぁ、コンクリになら電動ドリルがあればつけれるから、電動ドリルは持ってる?」


「いえ、使い方は知っていますが持ってはいないですね」

「そうか、じゃあまぁ俺のを貸してやるから、このサイズぴったりでいいの?いやそれよりも大きめでお願いします。50mm大きくしてください」

「おぅよ任しとけって」


 俺はここで働かせてもらっていることにとても感謝したんだが。ありがたいよな。

 店長自作の物を無料で頂いて、サイズの合うビスを購入してすぐに家に戻る。


 自転車を置いて、オカンにこれでいいか念の為に確認してから、オカンにプラスチックの物をしっかりと持ってもらい俺は電動ドリルで四角を止めることに成功。


「よしこれで大丈夫」

「亮介って本当に器用ね、ありがとうね」オカンは満面の笑みでお礼を言う。


 これで、ハンカチをポストに入れることはできまい。もっと早くこうすることが出来ていたらと思いもしたが、それを言い出したところで過去に戻れるわけではない。

 家の中に入りオカンは俺にコーラをついでくれて、オカンはコーヒーを飲みながら二人でまったりとロールケーキを食いながらテレビを見た。

 

 それからまもなく、他の家から次々とポストが消えていっていることに気が付いた。しかしまだまだポストが存在している家も多々ある。

 多分だが賃貸とかだろう、勝手な事をしたら賃貸の場合は出るときにその分のお金を取られると言っていた。まぁそれだけではないだろうが。

 それから一週間後、松下さんが首つりで自殺されたということが分かったのだった。

 自殺なんて本当にしたのだろうか?俺は首を傾げる。


 そして、翌日オカンが「亮介、大変、大変」と騒がしく俺の部屋に入り込んできた。

「なんだよオカン」

「手紙が届いていたのよ」

「はぁ?」

 俺は寝ぼけ眼で、手渡された手紙を開いた。


『ポストを無くすことは、これよりマイナスポイント4点とします。一週間以内にポストを直さない方は、追加でマイナスポイント4点です。さぁ、みなさんがんばりましょう』


「なんだよこれ……、オカンこれどこにあったんだよ?」

「ゴミ捨てに行ったら玄関に貼ってあったのよ、隣の家とかにも貼ってあったわよ」

「ハンカチは?ハンカチはなかった?」


「えぇ、見当たらなかったわ」そう言ってオカンの細長い顔は、今にも泣きだしてしまいそうなほどに赤くなっている。オカンは顔にすぐに感情が出る。

 

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