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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
第二章 進展
42/149

9

「お母さん……」顔が強張った姉貴の後ろにオカンがノックもせずに部屋に入ってきてオカンのその顔は引きつっている。


「あなた達最近様子がおかしいと思っていたのよ。大きな声が聞こえてきたからお母さん静かに上がって来たら……ハンカチって一体なんなのよ。応えてちょうだい」


「いや、それは……ね」姉貴が困惑した顔で言う。

「赤いハンカチが届いたのは今回が二回目じゃないのね?いいわ、あなた達が言わないんならお母さん近所の人に聞いてくるから」

「そうだよ、あれから何回か届いてる。オカンが心配すると思って言わなかったんだよ」


「だからって隠すことないじゃない」

「まぁそうなんだけど、オカン、どうもこのハンカチ、子供いたずらじゃなさそうなんだよ」俺は今までの経緯をオカンに事細かに説明した。


「つまり、ポストに入れられなきゃいいんでしょう?」

「……まぁ、そういうことだけど」

「だったらお母さんずっと見張っているわよ」

「お母さん大丈夫?」姉貴が心配そうにオカンに言う。


「大丈夫よ、それにお父さん今いない分私が頑張らなきゃ」

「まぁいざとなったらオトンが新幹線でブインと帰ってくれるだろうよ」


「え?そんなすぐに帰れるわけないじゃん?」

 ん?何故だ?俺は首を傾げる。


 「え?なんで?仕事でいくら忙しくても、新幹線で日帰りもできるだろうしさー」

「ちょっと、何言ってんの?日帰りで帰れるわけないに決まってるじゃん?大丈夫?アメリカにいるのよ?」姉貴が馬鹿にしたように言う。

「えー!そーなの?」

「あらっお母さん言わなかったっけ?」


「知らねーよ。は?マジかよ?聞いてねーよ。今まで海外に出張なんてなかったじゃん」


「だから事業拡大するから。良い事なのよ?」オカンは嬉しそうに言う。


「まぁそんなことより、亮介そのハンカチどこかに持って行ってくれるんでしょう?」姉貴が腕組みながら言う。

 なんだか、偉そうだな、オイ。


「あぁ……」

「気を付けてちょうだいよ。あなた達はお母さんの宝物なんだから」


 俺はしばらくの間考えていた。

 いや、正確にはずっと考えてはいたのだが……。


 この前、田中さんの家にハンカチを入れようと思ったんだが、ポストがみあたらなかったんだよな……。

ということはだ、ポストさえ無くしてしまえばハンカチを入れようと思ってもいれられないんだよな。 


 手渡しするわけにもいかないだろ?玄関先に置いておいて、そのハンカチをもし全然関係のない人がどこかへもっていったりすると大変だ。それで、もしも見つからないで一か月経過したときには……死が……。


 しかし俺の家のポスト、埋め込み式なんだが……。


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