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「亮介もう行って来たの?忘れ物?」オカンがびっくりした顔で言う。
「いや、そうじゃないけど面倒だしそのまま学校行こうかと思ってカバン取りに帰っただけ」
「亮介~でもまだ7時前よ?」
「やっぱ早いよな?」
「早いわよ~」
「だよねー、じゃあもう少し家でゆっくりしてから俺行くわー」
「たまに早く起きるとこれなんだから、まったく」
勝手に呆れらている俺。まぁいつもの事なんだが、なんだかな、なんだかなだよな、まったく。
「亮介~ちょっと来て~」
二階から俺を呼ぶ恐怖の声がする……。
「ハイ」やっぱり弱い立場の俺。二階に上がると姉貴が俺に「どうだったの?」と聞いてくる。
「入れたよ、川嶋って言う人の家に」
「大丈夫だったの?追いつかれなかった?」
「あぁ。大丈夫だった。ハンカチを返されることはなかったから」
「千絵~ちょっとお父さんのメガネ寝室から持って降りてくれない?」オカンが下から大きな声で叫ぶ。
「は~い」
「なんだよメガネ?しかもオカンだって。自分だって大きな声で近所迷惑じゃねーかよ」ずるいぞーずるいぞー。イジイジいじけてやるぅ!
「え~もしかして聞いてないの?お父さん暫く出張だよ?」
「へ~出張なんて久しぶりだな」
「なんかさー事業拡大とかで忙しくなるらしくて、もしかしたらそのまま単身赴任になるかもなんだってさ」
「はー?なんだそれ?そんな事俺聞いてねーぞ?」
俺は一階に降りて、オカンに聞く。
「オトンが出張なんてこと今初めて俺は聞いたぞ?」
「え?なんであなたに一々説明しないといけないのよ」
「でも姉ちゃんは知ってたじゃないか」ブリブリッ口を膨らませていじける俺。
「だって亮介家にいないじゃない!居ても寝てるか部屋にいるかだし。急に決まったのよ、前から話は出てたらしいけど。何?お父さんいなくて寂しいの?お父さんそう言ったら喜ぶわよ」
「え?なんだ亮介?お父さんいなくて寂しいのか?」オトンは洗面所から出てくると嬉しそうな顔をしてニヤけた。
いやいやいや……。
「お父さん千絵のお土産よろしくね」姉貴が思いっきりニッコリして言う。
「わかっってるって、じゃあお父さんそろそろ行かないと間に合わないから。いってくるぞ。亮介俺がいない間、お前が千絵と母さんを守るんだぞ」




