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「あ、関谷君めっちゃ嬉しそうな顔して~もしかして私の事、待ってた?」
……って、バレてるし~。
「いや、ハハハハハ。よく来たね、本当に来てくれるとは思いもしなかったからさ」
(嘘だろ~?お前さっきからめちゃめちゃ待ってたじゃん、だって?お~い、いいかそこの君、俺の気持ちが読めるのはよく分かる、でもその気持ちを川嶋さん本人に伝えんじゃねーぞ、いえ、ねーぞではなくて、伝えないようにお願い致します)
「え~来るに決まってるじゃん、私の方から行くって言ったんだもん、その制服凄く似合うね」
「ありがとう」お、お、お?褒められたぞ!これは喜んでいいんだよな~?
「いいな~私もここでバイトしちゃおっかな」
「……え?」お~い俺なんか他に言う言葉はないのか~。もっと話題と可能性が広がる様な言葉があるだろう?
「さっきレジの所に可愛い女の子いたよ?関谷君絶対あの子の事好きでしょう」
「は?」
「でもいいの、私と関谷君は同じクラスだもんね、ね~」
「あ……あぁ」
俺はふと視線を感じて、右を見る。
や、やべっ店長だ。
「じゃあ、ごめんけど俺仕事中だから。じゃ、また」
「待って、関谷君今日何時に終わるの?」
「うーん22時かな……でも色々やってたら多分22時半くらいかな」
「22時半?ちょっと遅すぎるね、待っていようかと思ったけど無理だぁ」
川嶋さんはすごく残念そうな顔をしている……様に見えるが、俺は女と言う生き物がさっぱり分からんからなぁ。
「ごめん、あ、ちょっと待ってて」俺そういってダッシュで自動販売機まで行き暖かいコーンポタージュを買った。
熱っ、あっちー。
そのコーンポタージュを袖で持ち、川嶋さんの所へ猛ダッシュで戻り「これ良かったら飲んで」とクールな感じで言った。
「えー嬉しい、ありがとう。しかも私がコーンポタージュ好きなのよく知ってるね?」
「お昼休憩とかによく飲んでるじゃん」
「え~見てくれてるんだ?私の事を」
しまったー。 俺はなんて危ない事を言ってしまったんだー。俺は後悔しながらも「ハハハハ」と苦笑いするっ事しかできなかった。
「本当にありがとうね、じゃあ私帰るね」
「気を付けて」俺は川嶋さんの後姿を見えなくなるまで見送った。だが、川嶋さんの方は後ろを振り向くことは一度もありませんでした。(誰?今、めでたし、めでたし♪って言ったのは)
川嶋さんが帰ってから、俺は黙々と働いたね。




