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「そうなの?へぇ~知らなかった。因みに何をしてるの、レジ?」あらまぁそうだったの?という顔で川嶋さんは立て続けに質問をしてくる。
「まぁレジもするけど、花の所にもいたりするし色々だけどね」
「え~じゃあ今度会いに行くね」
「いや~それはいいよ」
「なんで?あ、わかったアルバイト先に彼女とか気になる子でもいるんでしょう?」
……なんですぐにそっち方向に持っていこうとするんだよ。
「違うよ、ただ……」
「ただ?」
「いや、俺まだ入って一年も経ってないしさ……」
「それで?」
「いや、その。来てもいいです」
「え、本当に?じゃあ今日早速行くね。じゃあ私やることあるからあとでね~ん」
なんかさ、川嶋さんのことが姉貴に見えたんだが……?
いやいや、いくら何でもあんな魔女と川嶋さんを一緒にするのは失礼すぎるだろう。しかし、川嶋さんはなんで、あ~も俺の所に来るのかね。
もしかして、俺の事。
ムフフフ(誰だー今俺様の事をキモイって言ったやつは~)
学校が終わると同時に俺は、急いでバイト先に向かった。川嶋さんがいつくるか分からないし。
バイト先の制服持って帰って洗えばよかったかな~まぁそんなに変な臭いはせんだろう。俺はクンクンと犬の様にして臭いをかぐ。
うん、大丈夫だ、多分。
「関谷君あのお客さんが、上にある机を取ってほしいそうだ、悪いが俺の代わりに言って欲しい」
「はい」店長は俺の肩を軽くたたいて忙しそうに小走りで倉庫に入って行った。
俺はお客さんの所まで、走って行き、お客さんのお目当ての商品を上から降ろしてレジまで運ぶ。
「お兄さんありがとうね。助かったわ」五十代の女性がニッコリしながら言う。
「いえ、どういたしまして」仕事だから当たり前の事なのに、こんな風に喜んでお礼まで言ってもらえることは嬉しい。
その後も淡々と仕事をこなす俺。
「見~つけた、関谷君頑張ってる?」
キタキタキタキター。
俺はすっかり忘れていたかのような表情をして、「あ、川嶋さん」と言った。外面に見せない俺の心境はというと。
あ~川嶋さん遅いな~今日は、まさか約束しながらこれないとか…もしかして誰かと来るのか?誰かって誰だよ?彼氏とか?そんなはずは。
待ってくれ~川嶋さ~んと心の中は絶叫マシーンに乗った時の様に叫んでいたのだが……。
そうさ、そんな思いを俺は上手に隠すのさ!そう俺はポーカーフェイスなんだから!
キマッタぜ!ひゅ~。




