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「まったく変わってるんだから。別に家なんだからフォークとナイフを使ってかっこよく食べなくてもスプーンでいいでしょうに」
「いいだろう、ほっといてくれよ。それにしてもオムライスって本当にうまいよな~」
「あらっ、褒めてくれているのかしら」オカンの顔は嬉しそうに笑っている。
「まぁオカンの料理はうまいよな」
「まぁそんな上手言って、この子は。ほら、口の周りにケチャップついているわよ」
「ん?まぁそんなの食べ終わってから拭くさ~」
「オカンってさ、日中なにしてんの?」
「え?なに急に」
「いやさーオカンは仕事もしていないし、俺らが学校行った後はなにしてるんだろうって気になっただけ」
「そうね、色々よ家の事もあるし、それが終わったら本読んだりたまには遊びに行ったりね」
「ふーん気楽そうでいいな」
「そうね~学生の頃よりはお母さんも今がいいわね」
「え~なにそれ?どういうこと?」姉貴が急に割り込んできた。
「学生時代もそれなりに楽しいわよ。でも親がお金を払ってくれているから親の意見に従ったりしないといけないけど、今はそうじゃないじゃない、まぁ今はお父さんが働いてくれてるんだからお父さんの意見はもちろん聞くんだけど、お父さんって優しいでしょう?だからお母さんその中でもかなり自由にさせてもらえてるのよ、学生時代よりも自分で出来ることが増えて選択肢も広がったもの、それにあなた達もいるものね」
「ふ~ん、じゃあ千絵なんか学生生活大変じゃん」
「そうね、でも今しか出来ない事って沢山あるじゃない?」
「今しかできない事って?」
「うーん、そうね勉強なんかはいつだって何歳になってもできるものね。だけど、千絵や亮介が今したいことは、10年後になったらその時はしたいことじゃなくなっていたりするのよ。だから、いつも今、自分が本当にしたい事をしないとね」
「じゃあ俺、今日から勉強やめてゲームに没頭するわ」
「亮介、それは甘いわね。だって学費を払っているのもこうやってこの家に住まわせてもらっているのもお父さんのお蔭なのよ。だからお父さんが言うことは聞かなくちゃ。あなた達が自分で稼げるようになって自分だけの力で生きていけるようになった時には、自分が思う事だけしなさい」
「千絵の今したいことが今しかできない事か~なんだろう、お母さん千絵のしたい事って何だと思う?」
「それは千絵にしか分かるわけないでしょう。だってお母さんは千絵じゃないんだから」
「たしかに……」
「ごちそうさま」
俺はオムライスを一粒残さずたいらげて、お腹をさすりながらソファに寝転んだ。
ふぅ~食った食った。
「そういえば、亮介の部屋の前通ったら線香みたいな匂いがしたんだけど」




