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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
第二章 上進
142/149

26

「……」言い返す言葉が出てこない。


 いや、正確にいうならば喉までは出かかっているのだが、誰がこんな魔女みたいで女版ヤクザみたいなやつを目の前にしていう事が出来るっていうんだよ?

 この妖怪鬼ババめ!

 悪魔、長風呂豚、厚化粧のすっとこどっこい!

 せめても、心の中で反撃した!(誰?今お前は小学生か!って言ったのはよ?それな、本当にそれな笑)


「千絵だって、紹介してお付き合いしてるんだから弟のあんたもしなきゃいけないに決まってるでしょう、家に連れて来なさいよ。見てみたいもの」


 なんだよ?見てみたいから連れてこいって。付き合ったとしても二人には紹介なんて怖くてできるもんか。

 

「いやいや、残念ながら俺たちは付き合っていませんから、ご安心ください!」そう言って箸を置き居間を出た。


 あーあーあー、まったく面倒くさい姉貴をもったもんだよ。

 姉貴がいない奴から姉貴がいることを羨ましがられたりするが、ひとっつもいいことないぞ?


 世の中にはお優しくてお美人なお姉さんを持つ羨ましい輩がいるかもしれないが、俺の場合はそこには絶対に、そして永遠に当てはまらない。


 そしてC町の方へとなんの目的もなく、ふらふらと歩いて行くとゴミ屋敷から人が出てきて、そして隣の家にいくなり何かをポストに入れた。


 隣にいれるのが一番入れやすいというか、すぐそこだからな、分かるよその気持ち。ただ見られてしまったら気まずいけどな。


 少し離れた家ならそんなにあれだけど、隣だと何かと合ったりするからな。


 前から大きな犬を散歩させているおじさんがやってくる。あんなに大きい犬怖くないのだろうか?この前も犬の面倒を見ていた人が大きな犬に噛みちぎられて亡くなってしまったという事件があったばかりだというのに。


 公園の前まできて坂道を上がろうか悩んだが、後ろから「やられた」という声が聞こえたので振り返ると、先ほど黄色いハンカチを入れられた人が出てきて、そして走ってこっちにやってきたので俺は何も知らないふりをして下を向いて、トボトボ家に向かって帰り始めた。


 少しして振り返り確認したら俺とは逆方向に上っていった。


 うちに入れられなくて良かったと一安心してから家に帰ると姉貴はすでに鼻島さんのところにいったようで、ますます安心した俺は、物凄く良い気分でそしてゲームが捗った。

  夏休みに入ってから、ゲームを増やしてみたのだが。

 しかし、なんか昔ほどに楽しみきれないというかね。いやゲームが悪いわけじゃなくて、なんか暑いしさ。それに夏休みは川嶋さんに会う機会が減るじゃん?

 寂しいって言うかね、寂しいって言うかね、寂しいんだよな。

 


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