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川嶋さんは驚いたのか俺の顔を見て来たけど俺は川嶋さんの顔を見返さなかった。恥ずかしい、ただそれだけの理由だった。
その後も調べていくも、どこの家にもカメラらしきものは見つからなかった。
そして二人で自転車を置いている所に向かって下っていると、前から来た40代そこそこの夫婦が、手を繋いで歩いている俺たちに向かって「いいわね~若いって青春ね」そう言ってニコッと笑ってすれ違っていくもんだから、なんだか照れてしまい二人で揃えるようにしてくすっと笑った。
そして自転車の所までいき、そのまま川嶋さんの家へと向かって俺が川嶋さんの自転車を押しながら二人で歩いた。
「何もなかったね」
「うん、見れない所もあったけどね」
「でも一軒もないってことは、カメラはないって事なんでしょうね?」
「でもそれなら、どうやって誰かの家に入れたかそんな事が分かるんだよ」
「どうかなぁ」
そしてコンビニで服を着替えて、今日のお礼にと川嶋さんにハーゲンダッツのアイスを買ってコンビニを出ようとしたときに前から見覚えのある顔の人がちょうど中に入って来た。この人は!
「あれ?こんばんは」そう行ってすぐに声をかけると、その人はやっと俺の事に気がついたようで「亮介くん」と驚いた表情を見せていた。
その人というのは、そう姉貴の彼氏でありガクトさんそっくりの鼻島要さんだった。
「買い物?」ガクトさんは続けてそう訊いてきた。
「ええまぁ、鼻島さんは?」
「仕事帰りで、これからお姉さんを迎えに行くところ」
「え?お姉さんってことはもしかしてこの方が?」と川嶋さんが目を丸くして訊いたきた。
「あぁ、そう俺の姉貴と付き合って頂いてる鼻島さん」
「こちらは川嶋さん、同じ高校二年生です」
「あ、どうも」ガクトさんがそういうと川嶋さんもペコリとお辞儀をした。
「あ、関谷君私もう家すぐそこだからここでいいよ」
「え?送るよ。それじゃあ失礼します」俺はガクトさんに挨拶をして川嶋さんをいつもの所まで送った。
やはり今日も、川嶋さんは振り向いてはくれなかった。そして来た道を引き返してトボトボと歩いて家へと向かった。
その時、プププーとクラクションが鳴り響く音に驚き後ろを振り向くと、
「亮介君乗りなよ」とガクトさんが窓を開けてそう言った。
意外な展開に驚きながらも
「いいですよ、歩いて帰りますから。ありがとうございます」と言った。
「年上の言う事はきくもんだよ」ガクトさんはそう言ってしっかりと俺の目を見た。




