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川嶋さんがそんな風に言ってくれるお蔭で、地味な俺がピカンと光るような気がした。
そして、川嶋さんに一番に報告してから、そのままバイトへと向かった。
店長が仕事中だというのに、バイクを見せてくれ、乗せてくれとうるさかった。それも店長免許持ってないのに自分が運転すると言い張っていた。
その夜バイクでルンルンで帰りポストを開くと黄色いハンカチが入れてあって、せっかくだからバイクで行こうかと思ったが変に目立ってはいけないような(損するような)気がして歩いてC町へと向かった。
C町に入るなり左に曲がってずーと真っ直ぐ行き突き当りを右に曲がって坂道をずーっと歩く。
黄色いハンカチをポケットに入れて歩いていても、イライラするようなことなく余裕で鼻歌なんかうたいながら歩いて、犬の散歩のおじさんが曲がったので自分は真っ直ぐに進んでいたらいつの間にか一番奥の金持ちの家についてしまった。
そして普段なら絶対入れようなんて思わないのに、今日はなぜかベンツが三台停まってある「翠さん」のお宅へ入れようと思いついたのだ。
しかし、そのポストは何故か開かない。お金持ちの家だけに、開かず黄色いハンカチを手に持ったままという事に焦り始めて、この家に入れることはやめてポケットに黄色いハンカチを収めた。
しかし次の瞬間警報機が作動して、ウーと物凄い音で鳴り響いた。
ヤバイ事をしてしまった。そう思い捕まらないように坂道を猛ダッシュで下る。隣の耳山さんの暴力団系の家の人だろうと思われる人が「なんじゃー?」と言っているのが聞こえてくる。
黄色いハンカチどころでは、俺が警報機を作動させてしまった事を知られれば、どうなる事か分からない。
路地を曲がって曲がって公園のトイレに駆け込む。
足はガクガクと震えている。
息を切らしながら、姉貴に携帯で電話する。
「はーいなに?今いそがしいんだけど」
「姉ちゃん、家の前の方に誰かきていないか?」
「なによーなにかあったわけ?んもー、今忙しいんだから。仕方ないお優しいこのお姉さまが見てあげるわよ」
「頼む」
ドスドスドスドス。姉貴が階段を一段ずつ下りる音がする。
ガチャリと鍵の開く音がかすかに電話先から聞こえてくる。
「あ」
そういうと電話は切れてしまった。
ツーツツツツツ……
「もしもし?もしもし、姉ちゃんどうしたんだよ、おいっ」
何か起きたのか?
電話を掛け直すも繋がらない。慌てて家に電話を掛けようとアドレスを開いて掛けるが、電話がつながらない。




